安価で消費電力はLED並み、「T5蛍光灯」の正体は?LED照明(2/2 ページ)

» 2012年12月19日 09時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]
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ランプと安定器を専用設計とし、規格品ではできない調整も可能に

 プリンス電機が製造しているT5蛍光灯内部を飛ぶ電子の量は、Hf32型のインバーター式蛍光灯とさほど変わらないという。ただし、ランプに流す電力の量は同等とは限らない。プリンス電機のT5蛍光灯は、専用の安定器と合わせて使う必要がある(図3)。このように、ランプと安定器を専用設計にして、一般的な蛍光灯のような規格品では不可能な領域まで調整しているという。

図3 安定器やソケットをセットにしたもの。既存の照明機器を流用するための製品。プリンス電機はほかにも、専用の照明器具も発売している

 専用の照明器具と安定器は2種類用意している。1つ目は40型蛍光灯と比較して消費電力がおよそ50%少なく、明るさは大体20%弱くなるというもの。もう1つは消費電力がおよそ30%少ないが、約6%明るくなるというものだ。ランプを2つ付けた場合の、器具も合わせた消費電力はそれぞれ47.5Wと65Wだ。ちなみに、ランプ単体の消費電力はそれぞれ22Wと30Wとなる。

 一般的な蛍光灯を2本付けた場合の、器具も合わせた消費電力は88W程度だ。これと比べると、プリンス電機が用意している2種類の照明器具と安定器にランプを2本付けたときの消費電力量はそれぞれ46%減、27%減となる。

 先に説明したように、一般的な蛍光灯の明るさ(全光束)は2600lm程度だ。プリンス電機のランプの明るさは、多少光が弱くなっても消費電力を大きく節約するタイプで2100lm。一般的な蛍光灯と比べると全光束の値は20%減となる。消費電力を節約しながら、少しだけ明るく光らせるタイプが2850lmだ。全光束の値は一般的な蛍光灯の9%ほど明るい。

 ここでお気付きの方もいるかもしれないが、消費電力を節約しながら、少しだけ明るく光らせるタイプの消費電力は65W。一般的な蛍光灯に比べて消費電力量が27%減という数字は、Hf32型のインバーター式蛍光灯と同じだ。

 もちろん、Hf32型の製品の消費電力はメーカーや製造時期によって異なる。しかし、大きく変わることもないだろう。これはプリンス電機が「T5蛍光灯内部を飛ぶ電子の量は、Hf32型のインバーター式蛍光灯とさほど変わらない」と語っていることを裏付けている。おそらくこの製品を基に、多少光が弱くなっても消費電力を大きく節約するタイプを開発したのではないだろうか。

蛍光灯と変わらない光を放ち、寿命は2倍以上

 最近の蛍光灯は「三波長発光形蛍光灯」と呼ぶ。これは、3種類の異なる波長の光を発しているということを意味している。簡単に言うと3色(光の三原色である赤、緑、青)の光を放っているということだ。

 冒頭で説明したように、T5蛍光灯はインバーター式の細い蛍光灯だ。光を放つ仕組みも一般的な蛍光灯と変わらない。放つ光の質も三波長発光形蛍光灯とほぼ同じものだ。

 LED照明では、青色LEDに黄色の蛍光体を重ねて白色を作っている。LED照明の光を「青みがかっている」と感じることがあるのは、このためだと考えられる。放つ光の質を比べると、LED照明よりもT5蛍光灯の方が自然に感じる可能性が高い。

 最後にランプの寿命について説明しよう、一般的な蛍光灯の寿命はおよそ1万2000時間。LED照明の寿命はほとんどの場合4万時間だ。これに対してプリンス電機が製造するT5蛍光灯の寿命は2万5000時間。LED照明ほど長くはないが、一般的な蛍光灯の倍以上の長さだ。ランプが寿命を迎えたとしても、ランプの価格は1700円だ。

 先に説明したように、T5蛍光灯を使うには専用の照明器具が必要だ。しかし、その照明器具も2本のランプが付くタイプで1万9950円(税抜)と割安だ(図4)。図3にある既存器具を流用するためのセットを利用すればもっと安く済むだろう。

図3 プリンス電機のT5蛍光灯専用の照明器具

 T5蛍光灯の販売を始めた業者は、ほかにも数社存在する。照明の節電対策でお悩みの方は、検討してみてはいかがだろうか。

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