厳寒でも余裕がある北海道の電力、原子力なしでも節電で乗り切る電力供給サービス

今年の冬に電力不足の懸念がある北海道だが、現在までのところ需給状況は安定している。12月に入って平均気温が氷点下になる日が続く中でも、需要のピークが抑えられていて、節電対策の効果が表れている。複数の発電設備にトラブルが発生しない限り、無事に乗り切れる状況だ。

» 2013年01月10日 17時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 北海道電力が12月1日(土)〜1月7日(月)の需給状況を公表した。東日本大震災前の2010年度の冬と比べると、平均気温が低く推移している中で、電力の最大需要は少なく抑えられている状況が見てとれる(図1)。

図1 12月1日〜1月7日の最大電力と平均気温(2010年度は曜日を調整して表示)。出典:北海道電力

 2010年度の同時期で最大需要を記録したのは1月7日(金)の570万kWで、この日の平均気温はマイナス8度を下回った。これに対して今冬2012年度は12月27日(木)に548万kWに達したのが今のところ最大だが、当日の平均気温はマイナス8.4度まで低下した。

 ほぼ同様の気象条件と考えれば、2010年度から4%程度の電力を節約できたことになる。政府によって設定された節電目標の7%には届いていないものの、企業や家庭による節電対策の効果が出ていると見てよい。

 最大電力が発生した12月27日の状況を、北海道電力は次のように分析している。「平均気温はマイナス8.4度であり、12月の過去10年間の気温実績(札幌)からみても2番目に低く、天気は曇りのち雪でした」「12月としては記録的な寒波などの影響による暖房機器や融雪機器の高稼働により、7%の節電目標の基準である538万kWを上回ったものと考えられます」。

 当日の状況を詳しく見ると、14時から雪が降り始めて気温が低下し、18時台に最大電力を記録した(図2)。しかし19時台には需要が減って、ピークが過ぎている。17時台〜18時台のピーク抑制が重要なことを改めて示す結果である。

図2 最大電力が発生した12月27日の状況。出典:北海道電力

 それでも11月初めに北海道電力が公表した予測値と比べれば、12月の需要は低く抑えられている。節電効果を織り込んだうえで、寒さが厳しい状況を想定した場合の需要は最大563万kWに達すると予測されていた(図3)。12月27日の最大電力548万kWは予測よりも15万kW低い。1月と2月も同程度の需要に抑えることができれば、予備率が3%を下回る危険な状況にはならないだろう。

図3 今冬の電力需給の見通し(11月2日に公表)。出典:北海道電力

 北海道電力は当初から、発電設備のトラブルによって供給力が一時的に低下する可能性を強調している。実際に12月30日(日)には77万kWも供給力が低下する事態が生じたという。引き続きトラブルの可能性はあるが、需要のピークとトラブルの発生が重ならなければ、大きな問題にはならない。

 北海道電力は2010年度には原子力で119万kWの電力を供給していた。今冬は原子力なしで、火力を約40万kW増やして対応する。火力発電は1割の増加になり、その分の燃料費が追加で必要になる。

 とはいえ、1割程度の燃料費の増加であれば、原子力発電所の稼働・維持に必要なコストを上回るとは考えにくい。少なくとも北海道においては、原子力発電所を再稼働できないことを理由に電気料金を値上げすることは難しい。

*この記事の電子ブックレットをダウンロードへ

テーマ別記事一覧

 電力供給サービス 


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.