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» 2013年01月17日 15時00分 UPDATE

電気自動車:急速に広がるEVを活用したエネルギーマネジメント

電気自動車(EV)の技術が進展するのに伴い、従来のガソリン車とは異なった使い方が提案されつつある。中でもEVを活用したエネルギーの多様な利用形態が現実的になってきた。EVの特徴である充電機能をはじめ、再生可能エネルギーとの連携による電力供給の仕組みなどを紹介する。

[和田憲一郎/三菱自動車工業,スマートジャパン]

 三菱自動車工業は2009年7月に新世代の電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」の販売を開始し、日本ならびに欧米などにも販売を拡大している。さらに2011年末からは軽商用の電気自動車「MINICAB MiEV」を、2013年初頭からは「MINICAB MiEV TRUCK」、「OUTLANDER PHEV」と、矢継ぎ早にEV(電気自動車)・PHEV(プラグインハイブリッド電気自動車)のラインナップを展開する。

 このように、電気自動車(以下ではPHEVを含めてEVと表記)が進展するのに伴い、従来のガソリン車とは異なった使い方が提案されつつある。さまざまに広がるEVを活用したエネルギーの多様な使い方について、以下で順に紹介していこう。

進化する充電方式

 EVが従来のガソリン車と異なる大きな特徴として充電機能がある。充電と言えば、携帯電話を家庭のコンセントに差し込むことと同様に思われがちだが、EVの場合にはさほど簡単ではなく、専用の充電設備が必要になる。

 充電の方式はいくつかあり、普通充電、急速充電、さらにはEVを蓄電池として外部に電力を供給する方式も開発されている。まだ各社で検討段階だが、EVとの間をコネクターで接続しないワイヤレス充電の開発も進んでいる。以上を整理すると図1のようになる。

mitsubishi1.jpg 図1 充放電方式の多様化

 このうち普通充電では、クルマのみならず充電機器および家側の安全性を担保するため、国際標準電気会議(IEC)で充電の接続方式「IEC61851-1」が定められている(図2)。

 日本においても普通充電器が普及してくると、粗悪品などによりユーザーが被害をこうむることも考えられる。このため普通充電器の相互接続性(Interoperability)を解決し、安全・安心を担保する仕組みとして、2012年4月から日本自動車研究所(JARI)が認証業務を開始した。

mitsubishi2.jpg 図2 普通充電のモード仕様

急速充電(CHAdeMO方式)

 急速充電については、自動車メーカーや電力会社が共同で「チャデモ協議会」を2010年3月に設立し、同時に海外の自動車メーカーなどにも幅広く参加を呼び掛けてきた。その結果、2012年12月21日現在、CHAdeMO(チャデモ)方式の急速充電器は全世界で約1900台、そのうち海外でも約520台が設置されるまでに増加している(図3)。

mitsubishi3.jpg 図3 急速充電(CHAdeMO方式)

 一方、欧米の自動車メーカーは2010年末から、AC普通充電とDC急速充電を組み合わせた独自のコンボ方式の開発を行なっている。良く聞かれることだが、現在のチャデモ規格とコンボ方式など他規格との共存は可能なのか。その1つの解として、2012年9月にノルウェーで開催された急速充電器セレモニーが参考になる(図4)。

mitsubishi4.jpg 図4 ノルウェーでの急速充電3タイプ披露セレモニー

 このセレモニーでは3つの急速充電器が配置された。(1)チャデモ規格の急速充電器、(2)チャデモ規格&コンボ規格の急速充電器、(3)チャデモ規格&AC急速充電器である。

 この例のように1つの急速充電器で複数の方式に対応することができる。現在、欧州では数多くの充電インフラ提供会社が自らネットワークを構築し、急速充電・普通充電などの充電ビジネスに参入しようとしている。将来は複数方式に対応したマルチスタンダードの急速充電器が製品化される可能性もある。

EVからの電力供給機能

 EVからの電力供給については、東日本大震災を機に三菱自動車工業で開発を進めてきた技術がある。夏場や非常時の電力不足を補う電源装置として、EVの蓄電池から最大出力1500Wまでの給電が可能な電源供給装置「MiEV power BOX」を2012年4月に発売した。

 このほかV2H(Vehicle to Home)として話題になっているEVから家庭への電力供給機能については、AC充電口、DC充電口などを活用した方法がある。ただし現在、国際的な規格標準化や法整備が整っていない点もあり、それらの整備が待たれるところだ。

 三菱自動車工業では「けいはんなエコシティ次世代エネルギー・社会システム実証プロジェクト」の1つとして、EVから工場への電力供給にも取り組んでいる。2012年4月に愛知県岡崎市にある開発部門にスマートグリッド実証実験装置「M-tech Labo」を設置して、EVに搭載された蓄電池を活用した工場施設の電力平準化などの実証を行なっている。

 新たなEVの活用方法としては、農林水産省・復興庁が公募して採択された「食料生産地域再生のための先端技術展開事業」での実証試験もある(図5)。

mitsubishi5.jpg 図5 電気自動車と農業用充電ステーションの組み合わせによる農業エネルギーマネジメント実証研究(農林水産省・復興庁による平成24年度公募採択事業)

 これはEVと農業用充電ステーション、さらには電力供給装置を組み合わせることにより、風力発電、太陽光発電、小水力発電などの再生可能なエネルギーを活用して、系統電力に依存せずEVへの急速充電やハウス栽培等で使用する電力をまかなう試みだ。三菱自動車工業社内ではV2A(Vehicle to Agriculture)と呼んでいる。2013年度から宮城県岩沼市で実証試験を開始すべく、地元の関係者と準備を進めているところである。

 上記以外にも、まったく異なる新規の次世代充電技術としてワイヤレス充電がある(図6)。三菱自動車工業においてもまだ開発段階だが、2011年9月に米国のWiTricity社、日本のIHI社と3社による共同研究開発に着手した。現在は基本特性評価や国際規格標準化など、課題解決と実用化に向けて取り組んでいる。

mitsubishi6.jpg 図6 ワイヤレス充電

 このように、従来の走る機能に加えて、EVではエネルギーの多様な使い方が広がる。これは取りも直さず、EVの蓄電池をストレージとして有効活用する地域分散型のエネルギーマネジメントの始まりと言えるだろう。

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