発電システムの運用に欠かせないポイント(1)企画・立案、設計太陽光発電の事業化を成功させるために(2)(3/3 ページ)

» 2013年03月08日 15時00分 公開
[中里啓/UL Japan,スマートジャパン]
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PCSとモニタリングシステム:

 太陽光モジュールで作られる電気は直流であるため、電力会社の送電線に送るには交流に変換する必要がある。この直流から交流へ変換する設備は「パワーコンディショナー(PCS)」と呼ばれる。太陽光モジュールとPCSの選定が採算性に大きな影響を与える。

 PCSは出力10kW〜1000kWまで種類が豊富にあり、太陽光発電所の規模や配置方式などによって適切な種類を選定することになる。

 10kWクラスは住宅用でも使われるタイプで、日本では比較的安価に購入可能(価格帯は40〜50万円程度)である。サイズがコンパクトなので、太陽光アレイの下に配置可能であり、用地の制約があるところでは有効な選択肢と言える。

 一方、100kWを超える規模の発電システムになると、10kWクラスのPCSでは多数必要となってしまう。点検・部品交換作業などのメンテナンス性を考慮して、大型のPCSを採用することが多い。ただし10kWクラスのPCSと異なり、設置スペースを確保する必要がある。

 採算性を考える上で、直流から交流に変換する効率(変換効率)も重要である。変換効率は、大型のPCSの方が10kWクラスの小型よりも高い。前者は98%程度であるのに対して、後者は95%程度であり、数%の差がある。1000kWクラスの規模になると数%の変換効率の差は売電収入を大きく減額することになる。

 実際の現場では、100kWを超える規模になると100kW〜250kWクラスのPCSを使用しているところが多いようである。

 1000kWクラスの規模になると、使用する太陽光モジュールも約4000枚と膨大になるので、PCSに遠隔監視(モニタリング)機能を施しているものが多い。電圧や電流値、温度などに関して、閾値を超えると電子メールなどで連絡が届く仕組みである。こうしたモニタリングをPCS単位、ないしはアレイ単位で実施することで、異常個所を限定して現地での点検作業の効率を上げることが可能となる。

地域性に対する対策(塩害、積雪・氷結、鳥糞害、砂塵など):

 太陽光発電所は都心部よりも郊外に立地されることが多く、それぞれの地域性に対する対策も重要である。

 海岸地域では塩害の有無や錆びの発生状況などを確認する必要がある。重工業地帯や通行量の多い道路脇などで大気中の亜硫酸ガス濃度が高い地域では、架台などの金属の錆びや腐食が進みやすい。20年の耐用年数を考慮した亜鉛メッキ鋼材などを使用するケースが多い。

 積雪や氷結がある地域では、過去30年程度の地元気象台のデータから、最多積雪時でも太陽光アレイが埋没しない高さにしておく。さらに積雪が自重で滑落しやすく、氷結しにくい傾斜角度として、45度程度に設定することが一般的である。

 鳥の糞は付着して乾燥すると、雨などでは簡単に溶けず、受光障害になる場合がある。カラスが上空から小石などを落下させて太陽光モジュールの受光面を破壊することもある。周辺環境からカラスや鳩などの鳥、その他小動物が侵入する可能性が高い場合には、専用のフェンスなどを設置して飛来や侵入を極力防ぐことが必要である。

 砂塵や火山灰、黄砂などが多い地域では、堆積の状況によっては発電量を低下させる。太陽光モジュールには、雨水により表面の汚れを流して落とす「セルフクリーニング機能」があるので、これが有効に機能する傾斜角に設定するのが良い。

 以上で太陽光発電システムの企画・立案・設計に関して、重要なポイントを述べてきた。次回は設計後の「機器・業者選定、諸手続」について解説する。

第3回:「発電システムの運用に欠かせないポイント(2):機器の選定、諸手続き」

著者プロフィール

中里 啓(なかざと さとし)

UL Japan 営業部門 アカウントマネージャー。 総合商社で国内・海外の大型発電所のEPC、IPPプロジェクトなどを経験した後、外資系の半導体・フラットパネルディスプレイ・太陽電池の製造装置メーカーで太陽電池業界との関わりを深める。現在は太陽光発電をはじめ、エネルギー関連のサービス提供に従事。


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