新電力を併用する「複数契約」を広げよう、東京都知事が首都圏に提言スマートシティ

東京都の猪瀬知事が「脱・電力会社依存」の動きを加速させている。都が運営する水力発電所の電力売却先を東京電力から新電力へ切り替える一方、都庁舎などの施設で利用する電力の供給元に新電力を併用する「複数契約」を拡大中だ。首都圏の3県と5つの政令指定都市にも提案した。

» 2013年05月17日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 猪瀬知事が推進する「複数契約」は、利用する電力の最低限(ベース部分)を電力会社から購入して、季節などによって変動する部分を新電力から安く調達する方法である。2013年1月に東京都中央図書館、2月から東京武道館で採用した。さらに4月には都庁舎でも最大3000kWにのぼる電力を新電力から購入する契約を結んだ(図1)。

図1 東京都庁舎に導入した電力供給の「複数契約」。出典:東京都知事本局

 東京都中央図書館ではベース部分の50kWだけを東京電力から購入して、変動部分の最大780kWを新電力のエネットから購入することによって、年間で約400万円の削減を見込んでいる。同様に東京武道館ではベース部分の50kWを東京電力、変動部分の610kWを丸紅から購入して、年間に約350万円を削減できる予定だ。

 猪瀬知事によると、東京都が保有する施設全体で利用する電力は約100万kWにのぼり、2013年4月1日時点で30施設の4万kW程度を新電力と契約している。当面は全体の1割にあたる10万kWを新電力に切り替える方針で、今秋から契約変更を進め、350施設に拡大することを目指す。

 新電力との契約拡大は東京都が2020年に向けて推進中のスマートシティ構想の一環である(図2)。電力会社に依存しない自立分散型のエネルギー供給体制を実現するために、再生可能エネルギーやガスコージェネレーションの導入拡大と合わせて、新電力を加えることで供給源の多重化を図る狙いだ。

図2 東京都のスマートシティ構想。出典:東京都知事本局

 5月15日に都内で開催した「九都県市首脳会議」の場でも、猪瀬知事は参加した首都圏の3知事と5市長に向けて、新電力の利用拡大と複数契約の導入促進を提案した。すでに神奈川県でも庁舎などで利用する電力の契約を相次いで新電力に切り替えてコスト削減を進めている。

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