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» 2013年05月28日 13時00分 UPDATE

電力供給サービス:自治体の予算ゼロで発電が可能、ダム水力発電を立ち上げる

既存の公的施設を省エネ対応に変える、既存の設備から電力を得る。このような取り組みを進めるには資金が必要だ。ESCO事業を利用すると、自治体の出費を抑えたまま、省エネや発電事業のメリットだけを得られる。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 ESCO(Energy Service Company)事業を利用した発電の取り組みが進んでいる。発電に関する投資を伴わずに、発電のメリットだけを得られるからだ。

 そもそもESCO事業とは何だろうか。既存のビルや工場、施設は必ずしも省エネの取り組みが十分ではない。このため電気料金が多額に上り、これが負担となっていた。これまではビルなどを所有している企業や自治体が、自ら省エネの取り組みを進めるか、新規投資によって、省エネビルなどを作り直していた。

 ESCO事業の場合は、ビルなどの省エネに関する包括的なサービス*1)をESCO事業者が提供する。どの程度の省エネ効果が得られるのかは、ESCO事業者が保証する。省エネが実現できれば、光熱費が浮く。その一部をESCOサービス料として得るという事業だ。そもそも1970年代に米国で始まった事業であり、日本には1990年代以降に導入されてきた。

*1) 例えば省エネの診断や設計、施工の他、導入した設備の保守や運転管理、さらには事業資金調達も含む。事業期間は10年以上にも及ぶ。

 栃木県は、ESCO事業を使って多目的ダムに水力発電を導入しようとしている。対象は那珂川の支流である宮川にかかる寺山ダム(栃木県矢板市)だ。寺山ダムの目的は洪水調整や不特定揚水、上水道用水などであり、そもそも水力発電をしていない。

 ここに水力発電設備を導入しようとすると、栃木県の出費が必要だ。そこで、ESCO事業を利用した。事業者が自らの資金で水力発電設備を含む設備の設計、改修、運転、維持管理を行う(図1)。エネルギー削減の計測や検証、保証なども事業に含まれる。ESCO事業者は売電益を得て、これから初期投資を償却し、維持管理費や電気料金を支払う。

 図1では県の委託料が桃色で示されているが、実際にはゼロで契約を締結した。栃木県によればゼロ予算事業としては全国初の事業だという。

yh20130528Tochigi_system_590px.jpg 図1 ECSO事業導入のメリット。出典:栃木県

 県のメリットは複数ある。寺山ダムの施設自体が年間294万円の電気料金を必要としていたが、この支出が不要になる。設置後27年が経過した空調設備の更新料や管理費もなくなる。さらに、寺山ダムが一般家庭約170世帯分の電力を供給する。なお、ESCO事業者が設置した設備の所有権は県に残る。

 栃木県は2012年10月に日本工営の子会社であるNKダムESCO栃木を事業者として決定。2013年5月に寺山ダム発電所建設工事の起工式を行った。2013年9月からの発電サービス開始を予定する。今後は、2031年8月3日まで18年間ESCO事業を継続する計画だ。18年間のダム電気料金の削減効果は5290万円にも上るという。

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