太陽を追尾すると発電量が1.5倍に、スペインと米国が先行自然エネルギー

米国の調査会社Global Dataが太陽光発電や太陽熱発電向けの追尾型装置に関するレポートを公開した。スペインと米国が先行するものの、ヨーロッパ諸国や中国、インドにも普及が進んでいる。

» 2013年06月04日 15時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 少ない面積で、低コストながら最も効率的に発電できる太陽電池とはどのようなものなのだろうか。1つの解が「追尾型(ソーラートラッカー)」だ。常に太陽の方向に向く、「ひまわり」のような太陽電池だ。最大出力は変わらないが、光が斜めから入射することがなくなるため、正午以外の時間、午前中や午後の出力が固定式よりも増加する。発電量が1.5倍になることもある。

 追尾型の課題の1つがコストだ。太陽の位置を追尾するための光センサーや組み込み制御装置、ソフトウェアなどは低コストで入手できるものの、専用の架台が必要になる。従って、産業の規模が拡大しないと低コスト化が進まない。日本国内の導入比率も高くない。海外の事情はどうなのだろうか。

 米国の市場調査会社である米Global Dataは、追尾型装置市場の概要を発表した。市場規模は2009年に434MWだったが、3年後の2012年には1997MWまで成長したという。用途別では通常の太陽光発電向けが市場全体の50%(998MW)を占め、次いで集光型太陽熱発電(CSP)が47.4%(953MW)、集光型太陽光発電(CPV)が2.3%だとした。

 しかし成長率ではCPVが著しいと予測しており、2020年には20%に達するという。2020年における太陽光発電向けのシェアは36%、CSPのシェアは44%だという。

スペインと米国で7割を占める

 追尾装置の導入先は偏っている。2012年に導入された全世界の追尾型装置のうち、約42.6%がスペイン市場に入った。スペインは大規模な集光型太陽熱発電プロジェクトを進めており、全てが追尾装置を備えている。これが効いた形だ。スペインには出力100MWを超える集光型太陽熱発電所が10カ所以上ある。

 スペインに次ぐのは米国だ。米国では太陽光発電に追尾型装置が使われている。米国だけで2012年に422MWの追尾型太陽光発電プロジェクトが進んだという。イタリアは太陽光発電では米国に次いで2位だ。太陽光だけで118MW、太陽熱を加えると122MWのプロジェクトが立ち上がった。

図1 追尾型装置の国別シェア

 追尾装置には大きく分けて、回転軸が1軸のものと2軸のものがある。発電量がより高くなるのは2軸だが、架台の構造がより複雑になる。つまり高コストだ。Global Dataによれば、2012年に新設された追尾型装置のうち、1軸が92%を占めた。メガソーラーやトラフ式のCSPで多用されているという。2軸は住宅向けの太陽光発電の他、タワー式やパラボラ式のCSPで利用されている。CPVでは全ての追尾装置が2軸だという。CPV市場とタワー式のCSP市場が成長する結果、2020年に新たに建設される追尾装置のうち、28%が2軸になると予測した。

 なお、米Global Dataは「Solar Trackers - Global Market Size, Average Price, Competitive Landscape and Key Country Analysis to 2020」という市場調査レポートを販売している。図1に挙げた各国の市場分析の他、主要技術を解説したという。国内ではグルーバル インフォメーションが「太陽光追尾装置:世界市場の規模・平均価格・競合情勢・主要国の分析」として販売する。

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