国内初の浮体式による洋上風力発電所、福島沖で設置作業が始まる自然エネルギー

洋上風力発電の実現方法で技術的な難易度が高い「浮体式」の建設プロジェクトが、いよいよ福島県の沖合で始まる。最初に設置する大型風車の組み立てが完了して、いわき市の小名浜港まで運ばれた。10月に予定している試運転に向けて、沖合20キロメートルの海域で設置作業に入る。

» 2013年07月01日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 まもなく日本で初めての「海に浮かぶ発電所」が誕生する。経済産業省による「福島復興・浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」の第1期の建設工事が7月から太平洋上で始まり、10月から試運転を開始できる見通しになった。

 最初に設置する発電設備が福島県の小名浜港に7月1日に到着して、これから沖合20キロメートルの海域で設置作業を進めていく。風車の規模は千葉県の銚子沖や福岡県の北九州沖で稼働中の着床式による洋上風力発電設備と同等で、直径80メートルの大型風車を回して最大2MW(メガワット)を発電することができる(図1)。

図1 福島沖に設置する最初の洋上風力発電設備。出典:三井造船

 最大の特徴は巨大な風車を海に浮かべるための基礎部分の構造にある。4本の円柱を組み合わせた「4コラム型セミサブ方式」と呼ぶ構造を採用して、波や潮によって生じる揺れを抑える設計にした。基礎部分の下半分程度が海中に潜る「セミサブ型」である(図2)。

図2 浮体式の設置方法。出典:国土交通省

 この発電設備の近くには浮体式の洋上変電所(サブステーション)も建設して、海底ケーブルで福島県内の送配電ネットワークへ電力を供給する(図3)。順調に建設が進めば、10月までに発電と送電を開始できる予定だ。

図3 第1期で建設する発電・変電・送電設備。出典:資源エネルギー庁

 福島沖のプロジェクトは2015年度までの5カ年計画で、第1期と第2期に分けて実施する。第2期では風車を超大型にした7MWの発電設備を2種類の構造で建設することになっている(図4)。第1期の発電設備と合わせて16MWになり、浮体式の洋上風力発電所では世界でも最大級になる見込みだ。

図4 福島沖に建設予定の洋上風力発電設備の全体概要。出典:福島洋上風力コンソーシアム

 経済産業省はプロジェクトが終了する2015年度までに、浮体式による洋上風力発電の技術を確立させる方針である。福島沖の実証実験を通じて、発電・変電・送電設備の最適化をはじめ、発電事業の経済性、環境影響の評価、船舶の航行安全性、漁業との共存方法などを検証する。

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