熱気がこもる「製鉄所」、その熱を直接10kWの電力に変える蓄電・発電機器(2/2 ページ)

» 2013年07月12日 13時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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そもそもなぜ熱から電力が生まれるのか

 熱を電力に変える部品は熱電発電モジュールと呼ばれる約5cm角のチップだ(図4)。図4左にあるチップの裏面を加熱し、表面を冷却すると上部の2本の導線に直流電流が通じる。冷却といっても温度差があればよいため、冷却側は室温でも構わない。

 チップのうち、左側はパッケージの中身が見えている。金色の長方形が161個並んでおり、この部分で電流が生まれる。金色の長方形1つを拡大し、断面を表したのが図4の右側のイラストだ。高温の金属と低温の金属の間に、「N形」と「P形」と書かれた半導体が挟まれている。いずれもビルマス(Bi)とテルル(Te)と呼ばれる2種類の金属元素からなる化合物(Bi2Te3)でできた半導体だ。半導体の両端に温度差を与えると起電力が生まれるゼーベック効果を利用している。

 図4のチップは280度、30度という条件で最高効率が7.2%、最大出力が24Wである。「連続鋳造工程では20W程度の出力が得られている」(KELK)。

図4 熱電発電素子の外観(左)と原理。出典:KELK(左)、JFEスチール(右)

 連続鋳造工程に取り付けた熱電発電システムは、図4のチップを16個入れたパネルを56枚(7枚×8枚)配置したもの。つまりチップを896個使っている。全体の面積は約8m2だ(図5)。

図5 熱電発電システムの外観。出典:JFEスチール

 なお、KELKの熱電発電モジュールは、2009年1月からコマツの粟津工場の熱処理炉に設置されており、2012年3月まで1万3000時間の実証発電試験を継続している。このときは、発電した電力を工場の照明に利用していた。

【訂正】 記事の掲載当初、2ページ目第4段落で「図4の左側のイラストだ」としておりましたが、これは「図4の右側のイラストだ」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです。

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