トヨタが他社と「最先端工場」を目指すのか、まずは熱と電力の共同管理からエネルギー管理

トヨタ自動車は、1工場に閉じたエネルギー最適化から、さらに複数の他社工場と連携したエネルギー最適化へと進む。愛知県豊田市で5つの狙いに沿ったプロジェクトを2014年度から開始する。

» 2013年07月16日 11時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 工業団地は呼び名の通り、多数の工場が1カ所に集まる。どの工場も電力を必要とする。排熱や冷却など電力以外のエネルギーの管理もそれぞれの工場が進めている。しかし、各工場は独立して操業しているだけだ。それならば、複数の工場がまとまって電力や熱を融通し合えば、より効率的になるのではないだろうか。

図1 愛知県豊田市の位置

 トヨタ自動車が2013年7月に発表した「工業団地における地域熱・電力共有システム構築」の取り組みは、まさにこのような着想からスタートしたプロジェクトだ。

 現時点ではプロジェクトへの投資額や、詳細な実施期間はもちろん、省エネルギー量の目標も決まっていない。しかし、同社が本社を置く愛知県豊田市で、トヨタ自動車の工場を中心に周辺の中小企業を巻き込み、工場排熱や発電電力を共有、活用したいという狙いははっきりしている(図1)。2014年度の実証開始を前に、2013年7月からまずはマスタープランを策定し、実行可能性を検討する。

5つの狙いとは

 マスタープランが前提とするのは、5つの狙いだ。第1に熱・電力利用の最適化、最小化を狙う。FEMS(工場エネルギー管理システム)はもちろん、原動力や生産設備での排熱を蒸気や温水、熱媒体などに取り込んで再利用する排熱回収技術、さらには蓄熱技術や、熱を容器に貯えて車両などで熱需要者に運ぶ熱輸送技術を使う。工業団地内で熱を中心に電力も合わせた共有化と最適化、使用量の最小化をもくろむ。この第1の狙いが第2から第5までの前提となる大枠だ。

 第2の狙いは電力ピークの抑制。特に夏季には工場に対しても電力ピークの抑制策が強く求められている。だが、単独の工場でできることはほぼやり尽くしている形だ。そこでさきほどの蓄熱の他、熱を電力に直接変換する熱電変換技術(関連記事)を使って、工業団地全体に広がる電力システムを作り上げる。

 3つ目は熱の輸送と共有化、再利用の手法だ。パイプラインなど熱を輸送するインフラを新たに構築していては、初期投資額が巨額になるだろう。そこで既存の製品物流を生かして、蓄熱密度の高い化学蓄熱(関連記事)と組み合わせた簡潔な輸送システムを作る。

 第4の狙いは、排熱情報を共有することで生まれるビジネスモデルの確立だ。いつ、どの工場でどの程度の排熱があるのか、熱が必要な工場はどこなのか、マッチングが必要だと言うことだ。

 最後の第5の狙いは地域全体との結び付きだ。工業団地内の熱と電力をFEMSで管理できた段階で、これを地域の電力需給バランスや交通情報を調整するEDMS(エネルギーデータ管理システム)と連携させる。工業団地のエネルギー最適化が地域のエネルギー最適化とつながるということだ。

 なお、トヨタ自動車は各工場の生産工程と自家発電の需給を管理するシステム「TTDM(Toyota Total Demand Management)」を構築しており、豊田市の実証でもTTDMやトヨタ独自のHEMS、EDMSなどと結びついた形になる可能性がある。

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