中小水力発電に損害保険、天候不順も補償の対象に自然エネルギー

このところ地方自治体を中心に、農業用水路などを活用して中小水力発電設備を導入する事例が増えている。大手損保の三井住友海上が中小水力発電を対象にした保険商品を発売した。火災や地震のほか、天候不順による降水量などの減少も補償の対象に含めることができる。

» 2013年07月19日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 これまで太陽光発電の保険商品はあったが、中小水力発電を対象にした保険商品を大手の損害保険会社が発売するのは初めてである。三井住友海上火災保険が7月から販売を開始した保険商品は「中小水力発電総合補償プラン」で、固定価格買取制度の対象になる出力3万kW未満の発電設備の損害リスクを補償する内容だ。

 火災や地震などによる発電設備の損害をカバーするだけではなく、発電量に影響する天候不順リスクを補償するデリバティブ(金融派生商品)を組み合わせるのが特徴である(図1)。発電に使う水量を左右する降水量や積雪量などの想定値を決めて、下回った場合に補償金を支払う仕組みだ。このような「天候デリバティブ」と呼ぶ商品は東京海上日動火災保険でも販売していて、同様の補償プランを個別に組むことは可能である。

図1 「中小水力発電総合補償プラン」の内容。出典:三井住友海上火災保険

 保険料は天候デリバティブの部分を除いて、5億円の発電設備の場合で年間200万円程度が標準になる(図2)。天候デリバティブは保険ではなく金融派生商品のため、設定した条件によって契約料(プレミアム)が決まり、実際の天候によって補償金を計算する。損害額が補償されるわけではない点は注意が必要だ。

図2 契約内容の例。出典:三井住友海上火災保険

 中小水力発電に限らず、固定価格買取制度の対象になる再生可能エネルギーは費用と想定収入から採算性を見込みやすい。最大の不安材料は発電量が想定を下回って収入が減少してしまうことである。あらかじめ保険を組み込んで採算性の確度を高めることができれば、事業者のリスクは小さくなる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.