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» 2013年07月19日 09時00分 UPDATE

蓄電・発電機器:導入・運用費用がゼロの電力源、ソフトバンクと米社がデータセンターやオフィス向けに提供 (1/2)

米国で産業用大型燃料電池システムを開発、運用する米Bloom Energyとソフトバンクが合弁会社を設立、日本国内向けのサービスを開始した。特徴は導入時の初期コストに加え、運用コストも必要なく、電力料金の支払いだけで利用できることだ。導入しやすく、新たに電力会社と契約した場合と使い勝手が変わらないうえに、ビジネス継続性を高めやすい。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 米国企業が導入する新しい電源――それが「Bloom Energy Server」(エナジーサーバーサーバー)だ。エナジーサーバーを開発、運用する米Bloom Energyは、大出力の燃料電池を大規模に展開した史上初の企業の1つといえるだろう*1)。同社の顧客一覧を見れば、米Coca-Colaや米Googleなど著名な企業が続々と導入していることが見て取れる(図1)。出荷、設置を完了したエナジーサーバーが約5年間に出力した電力量は7億kWhを超える。企業活動を支えるだけの能力があることが分かる。

*1) 富士電機は国内で産業用の大型燃料電池システムを事業化している。Bloom Energyとは方式が異なるりん酸形(PAFC)を採用し、出力105kWのシステムを量産している。

yh20130719Softbank_customers_350px.jpg 図1 エナジーサーバーの米国における主な顧客。出典:米Bloom Energy

 ソフトバンクは2013年7月、SBパワーマネジメントとBloom Energyが日本で電力供給を行う合弁会社Bloom Energy Japanを2013年5月29日に設立したことを発表した。資本金10億円と資本準備金10億円を2社が50%ずつ出資した形だ。

 Bloom Energy Japanのビジネスモデルはこうだ。顧客企業へエナジーサーバーを取り付ける際、本体の費用や設置工事費用、メンテナンス費用、燃料となる都市ガスの費用は全てBloom Energy Japanが持つ。エナジーサーバーが出力する電力を顧客企業が購入し、Bloom Energy Japanはこの電力料金を収益源とする。つまり、エナジーサーバーの本体を販売するのではなく、リースとも異なる形態だ。

 エナジーサーバーの電力料金はどのように決まるのだろうか。「国内の電力料金は現在でもさまざまなメニューによって全く異なる。従って、エナジーサーバーの電力料金を一律に示すことはできない。ただし、導入以前の電力料金と同等かそれ以下になることは保証できる」(ソフトバンク)。

 エナジーサーバーの想定顧客が集まる中核市場は電力供給がBCP(事業継続計画)の軸となる業種、例えば病院やデータセンター、市庁舎などだという。オフィスビルや大規模スーパーなども対象となりうる。法人のみを対象とし、個人事業者や一般家庭には当面提供しない計画だ。

yh20130719Softbank_map_250px.jpg 図2 エナジーサーバーの国内第1号の設置先

 第1号の設置先は、ソフトバンクモバイルが入居する高さ100mのオフィスビル「Mタワー」(福岡市早良区)である(図2)。2013年7月末には機材が現場に到着する予定だ。

 エナジーサーバーを導入することは、顧客企業からすると、従来の電力会社に加えて、新しく別の電力会社と契約を結ぶ形に近い。初期コストや運用コストが必要ないからだ。これまでは企業向けの電力源を新たに導入しようとすると、特定規模電気事業者(PPS)と契約するか、太陽光発電システムを導入する、数千万円の初期投資が必要な産業用燃料電池を導入する、非常用に限定したディーゼル発電機を設置するなどの方法しか選択できなかった。いずれも一長一短があった。

 顧客企業にとってエナジーサーバーの価値はどこにあるのか。主に4つある。1つ目は都市ガスを使って発電するため、分散型電源として優れており、系統電力に頼ることができない場合にも安定した出力が得られる。つまり、ビジネス継続性を支えてくれることだ。2つ目は、電力コストの安定性だ。一般電気事業者(10大電力)から電力を購入する場合、契約は1年単位である。今後の料金がどのようになるのか、上昇する傾向にあることは分かるが、不確実性が残る。エナジーサーバーは標準で20年間定額料金の契約であるため、不確実性が減ることになる。電力料金を大幅に引き下げると言うより、電力をめぐるさまざまなリスクを減らす役に立つということだ。3番目は出力(購入量)を必要なだけ高められること。4番目は以下に示すように設置面積をそれほど要しないことだ。

どの程度の電力が得られるのか

 エナジーサーバーの出力は、1台当たり210kW。米国では製品の改良が進み、現在3種類のエナジーサーバーが出荷されているが、国内ではそのうち「ES-5700」のみを据え付ける計画だ。Bloom Energyは、ES-5700を導入すると総床面積が約8000m2のオフィスビル、または160戸の米国で平均的な戸建て住宅の電力をまかなうことができるという試算を示している。

 ES-5700の重量は19.4トンあり、寸法は8m×2.6m×2m。マイクロバスとほぼ同じ大きさである。屋外に設置できるため、建物内のスペースが限られている場合でも対応可能だ。

 エナジーサーバーの特徴は複数台を接続することで出力をいくらでも高められることだ(図3)。例えば世界最大のソフトウェア企業の1つ、米Adobe Systemsは2010年、本社に1.2MWのシステムを導入した。オークションサイトなどを運営する米eBayは2013年に6MWのシステムを導入している。いずれも複数台を接続することで実現した。

 図3には遺伝子解析などに取り組む米Life Technologiesの本社に導入された1MWのシステム(上)とBloom Energy本社に設置した600kWのシステム(下)を示した。

yh20130719Softbank_servers_342px.jpg 図3 複数台が設置されたエナジーサーバーの様子。出典:ソフトバンク
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