マサイ族で有名なケニアの電力源は?ウイークエンドQuiz(2/2 ページ)

» 2013年07月19日 19時30分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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正解:

 e.地熱

ミニ解説

図1 ケニアの位置

 インド洋に面した東アフリカの国、ケニアは日本人にも比較的知名度が高い国の1つだ。伝統衣装をまとう「マサイ族」や野生の王国「マサイマラ国立保護区」はテレビ番組でも定期的に取り上げられている。赤道直下にもかかわらず氷河を頂くケニア山(5199m)も絵になる。

 ケニアの面積は日本の約1.5倍に相当する58.1万m2、人口は約4300万人だ。ケニアは東アフリカでは最も経済的に成功した国だった。国民の7割以上が携帯電話を持ち、3割以上がインターネットに接続している。基本的には農業に依存しており、茶やサイザル麻の生産は世界第3位と成功している。工業は食品工業を中心とした軽工業が盛んだ。ところが2007年以降は内戦に陥りかけるなど不安定な状態が続いている。東に接するソマリアの状況も良くない。人口増加率も2.7%と高い。

 それでも経済成長はゆっくりとした足取りながら続いており、電力需要が増え続ける見込みだ。ケニア政府の取り組みは、電力源に占める再生可能エネルギーの比率を高めることだ。ケニアは産油国ではなく、石炭も産出しない。燃料の必要ない電力源が必要だ。

 ケニアの年間発電量は65億kWh(2009年)。注目すべきなのは再生可能エネルギーをうまく利用していることだ。2009年時点の電源構成は最大の火力が46.5%、次いで水力の33.5%、地熱の20.0%だ。

 なぜこれほど地熱が多いのか。それは、アフリカ大陸が2つに分かれようとしている地溝、アフリカ大地溝帯(グレートリフトバレー)が国を南北に横切っているからだ。地溝では地球内部から物質がわき上がっており、大きな熱量が貯えられている。これを取り出している。

 ケニア政府は再生可能エネルギーの振興策を打ち出している。税制上の優遇策や固定価格買取制度(FIT)は導入済みだ。ケニアの電力需要が増加するにつれて地熱発電の比率が2012年には約1割にまで落ちており、これを一気に挽回しようとしている。

 2011年時点の地熱発電の容量は16.3万kW。ケニア電力公社は地熱発電だけで2016年までに160万kW、2030年までに500万kW(原子炉5基分程度)をまかなう計画を立案している。これは電源構成のうち27%を地熱でまかなうという野心的な計画だ。絶対量だけを見ても2011年時点の出力の30倍に相当する。計画的な地熱発電所の増強が必要だ。

 ケニアの地熱発電所増強には日本企業も協力している。2011年には300億円を投じるケニア最大の地熱発電プロジェクトを豊田通商が受注しており、韓国の現代エンジニアリングとともに取り組む(図2)。新たに建設するオルカリア地熱発電所(出力14万kW)の建設工事と地熱発電設備一式を納入するというものだ。現代エンジニアリングに機材を納入するのは東芝である。2014年4月の完成を目指して、建設中の段階だ。

図2 オルカリア地熱発電所の取り組み。出典:豊田通商

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公開した「地球温暖化対策技術普及等推進事業 グレート・リフト・バレーにおける地熱発電プロジェクトの案件 発掘調査」によれば、グレートリフトバレー全域の地熱資源量は14GW、ケニアはエチオピアと並んで5GWだという。

 ケニアの地熱資源は確かに多い。だが、翻って日本を見ると、地熱資源量は23GWもある。これはケニアの5倍近い量だ。

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