c.サトウキビかす
バガス(bagasse)とは、サトウキビ(図1)やモロコシ(ソルガム)の茎をいう。サトウキビの場合、砂糖を取り出すために茎を絞り、汁を抽出した後の残った部分をバガスと呼ぶ。
食生活に欠かせない砂糖は全世界で年間1億5000万トン以上生産されている。そのうち、6割強がサトウキビ由来、3割強がテンサイ(サトウダイコン)由来だ。サトウキビの生産量は年間17億トン。ここから絞り汁を抽出した絞り滓が約5億トンだ。5億トンのうち、約5割が水分である。バガスのうち、例えば数百万トンはバガスパルプとして紙の原料となっており、家畜の特殊飼料としても役立っている。バガスの用途の1つがバイオマス発電の燃料だ。サトウキビの生産量は年間5%程度の成長率で伸びており、これに比例してバガスの量も増えていく。
乾燥したバガスの成分は約5割がセルロース、約2割がヘミセルロース、2割がリグニンだ。これは木材の成分と非常によく似ている。つまり、バイオマス発電で、林業から生まれる林地残材を活用しているのと同じ構図だ。
バガス発電は大規模なものになりうる。例えば、オーストラリアのクイーンズランド州マカイ市に拠点を置く同国最大の精糖企業Mackay Sugarは出力36万kWのバガス発電所を運営している。バガスを利用した北米最大のバイオマス発電所はFlorida Crystalsが運営するもので出力は14万kW。年間80万トンのバガスと70万トンの製材廃棄物を利用する。
みずほ情報総研が2013年2月に発表した「平成24年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (バイオマス・廃棄物による発電利用及び熱利用の導入実績調査) 報告書」によれば、国内では鹿児島県と沖縄県にバガスボイラーが導入されている。発電容量は2県で2.1万kWに達する。
これは国内の食品廃棄物由来(1.9万kW)、下水道汚泥(3.3万kW)、家畜排泄物(1.4万kW)、製材廃棄物(5.5万kW)などと同水準の発電量だ。2県に限定されているにもかかわらず、バガスにはバイオマスエネルギー源として実力があることが分かる。
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