次はPEFCとは対極的な性格を帯びた燃料電池を紹介する。固体酸化物形燃料電池(SOFC)だ。
SOFCの魅力はなんといっても高効率であることだ。PEFCの効率が30〜40%であることに比べ、50〜65%に達する。これはコンバインドサイクルを導入したガスタービンでも達成できない高い値だ。水素を使う発電方式では最も効率が高いといえる。
さらに最大1000度に達する温度条件で動作するため、触媒は不要だ。水素以外の燃料を使いやすく、炭素が特に多い燃料を使わない限り高性能な改質器は必要ない。
欠点もある。1000度の条件では金属材料では耐久性を維持できない。従ってほとんどの部分をセラミックで作る必要がある。停止状態から1000度に持って行くには時間がかかる。頻繁に起動停止を繰り返す用途には向かない。
このため、当初は発電所や船舶の動力源など大出力用途に向いていると考えられていた。現在でもコンバインドサイクルの前段にSOFCを取り付けて使うトリプルコンバインドサイクル発電の実用化研究が進んでいる。
現在はもう少し小出力のSOFC機器が商品化されている。米Bloom EnergyのBloom Energy Serverは出力200kW(関連記事)、国内のエネファームは700Wだ(関連記事)。産業技術総合研究所(AIST)は可搬型のSOFCの研究を進めている(関連記事)。
SOFC内部の化学反応を図3にまとめた。PEFCと同じく3つの部分からできている。ただし、全てセラミック製であり、貴金属の触媒もない。
さらにPEFCと違って移動するのは水素イオンではなく、酸化物イオン(O2−)だ。空気極で酸素が電子を受け取って酸化物イオンとなり、電解質を移動する。燃料極では移動してきた酸化物イオンが水素と反応して水となる。一酸化炭素(CO)やメタン(CH4)が燃料として入ってきた場合もそのまま反応する。
連載第5回:「なぜなぜ海洋温度差発電」 8月16日掲載予定
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