関西の節電効果は前年から1%ダウン、工場の電力需要が増加電力供給サービス

関西電力が今夏の電力需給状況を分析した結果、震災前の2010年度と比べた節電効果は10%にとどまり、2012年度の11%から1ポイント減少した。家庭と企業の節電は進んだものの、工場の需要が大幅に増えた。来夏に向けて原子力発電所を再稼働すべきかどうかの判断にも影響を与える。

» 2013年09月03日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 7月と8月の最大電力を見ると、毎日の最高気温と連動していることがわかる(図1)。最大電力のピークは8月22日(木)の2816万kWで、土日祝日とお盆期間を除いて今夏の最高気温を記録した日である。幸いにも8月中旬のお盆期間に気温が最も高くなった。時期がずれていたら、さらに最大電力が上昇していた可能性がある。

図1 今夏の最大電力と気温。出典:関西電力

 需要がピークだった8月22日の供給力は2931万kWで、需給率は96.0%に達した。最大電力と供給力の差は115万kWしかなく、原子力の「大飯発電所」の1基分(118万kW)とほぼ同規模だった。これだけを見ると、大飯発電所が稼働していなかったら電力不足の状態になっていたことになる。

 ただし実際には供給力に含められていない試運転中の火力発電所が稼働していた。大規模な設備更新を進めている「姫路第二発電所」では、出力48万6500kWの新1号機が2012年11月から、同じ規模の新2号機が2013年6月から試運転を開始した。2つを合わせると97万3000kWの供給力を上積みできる。このうち新1号機は8月27日に営業運転を開始して通常の供給力に加わった。

 姫路第二発電所は2015年6月までに新6号機までが営業運転を開始する予定だ。新1〜6号機の合計で292万kWになり、既存の設備(4〜6号機で165万kW)よりも供給力が127万kWも増える。かりに大飯発電所を稼働させない状態でも全体の供給力は2822万kWを確保することができて、今夏の最大電力2816万kWをわずかに上回る。もっとも、これでは供給力がギリギリで危険な状態になってしまう。

 そこで問題になるのが今後の節電の見込みだ。今夏は異常気象と言われたが、来夏以降も同様の猛暑になる可能性は十分にある。関西電力の分析によると、2010年度と比べた今夏の節電効果は約270万kWだった(図2)。前年の2012年の夏は約300万kWの節電効果があり、30万kWも少なくなってしまった。

 用途別に見ると、家庭用と業務用(一般企業)の節電効果は2012年から拡大したにもかかわらず、産業用(工場など)が大幅に縮小した。今夏は節電の要請がなかったために、昼間にフル稼働した工場が多かったものと考えられる。

図2 2010年度からの節電効果。出典:関西電力

 前年以上の暑さだったにもかかわらず家庭用と業務用の節電が進んだことは、無理のない節電でも効果を高められることを示している。消費電力の小さい機器やガス冷暖房に買い替えたり、BEMS/HEMS(ビル/家庭向けエネルギー管理システム)を導入したりすることによって、需要のピークを定常的に抑えることができるようになった。

 今後は産業用の需要を家庭用や業務用と同程度に抑制できれば、原子力発電所を稼働させなくても夏の最大電力に対応することができる。工場には古くて消費電力の大きい機械が大量に存在する。国の補助金などを通じて機械の買い替えを促進する施策が必要だ。

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