NECの技術の詳細に入る前にラック冷却技術ではどのように直接排熱するのかを紹介しよう(図3)。図3の右上に示したものが最も単純な冷却手法だ。ラックが発する排熱を空調機が吸い、冷却して室内に戻す。ラック冷却技術を使うと、ラック背面で熱の一部を液体(図では冷媒)が吸い取る。液体は自然に屋外に熱を輸送していく。輸送できなかった熱だけを従来のように空調機で取り除くという仕組みだ。ラック冷却のレイアウトを別の角度から見たものを図3の左側に示した。
ラック冷却技術は液体の気化熱を利用して排熱を運び出す手法だ。サーバの背面に管を通し、その中を通る水が排熱を吸って気化する。そのときに熱を奪う。手のひらに水を付けて風を当てると涼しく感じるのと同じ原理だ。
水の気化熱を利用することはさほど難しくない。問題は満遍なく、効率良く熱を運び出さなければならないこと。NECの技術開発もこの部分に焦点が当たっている。気化熱を利用した場合に難しいのは、多数のサーバを同時に冷却するからだ。
図4左に示したように、ラックの背面に配管を置き、管中を下から上に液体が流れていくように配置したとしよう。配管の下部では「水圧」が高く、熱を受けても蒸発(沸騰)しにくい。これでは熱を運び出すことはできない。配管の上部では液体がすっかり蒸発しており、やはり冷却できない。一部のサーバだけが冷えて、それ以外は冷えない。形を変えたホットスポットの再現であり、これではだめだ。
NECの技術開発の最大のポイントは、図4右のようにサーバごとに配管を設けたことだ。「多段式高効率冷却技術」と呼ぶ。全てのサーバが割り当てられた配管内の液体に熱を渡すことができる仕組みだ。図4右では配管の横断面が描かれている。
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