重要度が高い「元素」はどれ?ウイークエンドQuiz(2/3 ページ)

» 2013年09月13日 23時20分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

正解:

 b.ジスプロシウム

ミニ解説

 元素は代替が難しい原料だ。ある有用な元素が希少だからといって、似たような性質を持つ別の元素から合成することはできないからだ*1)。そこで元素戦略が重要になってくる。産業界にとっては、元素の使用量を減らしても同じ効果が得られるような技術開発が重要であり、中期的にはそもそも希少元素を用いなくてもよい技術の開発が望ましい。

*1) この考え方には例外がある。例えば半導体では周期表上で1つ置いて隣り合った元素を混合することで、中間の元素と似た機能を得ている。半導体以外の例もある。京都大学では1つ置いて隣り合った元素をナノレベルで混ぜ合わせる「元素間融合」の研究が進んでおり、ロジウムと銀を混ぜることで、中間のパラジウムと似た性質を得た。

 このため、文部科学省は産業競争力に直結する4つの材料領域を選んで、希少元素を代替するような材料開発を進めようとしている。2012年度から始まった「元素戦略プロジェクト」だ*2)。4つの分野とは磁石材料、触媒・電池材料、電子材料、構造材料だ。磁石材料はモーターや発電機に関係し、触媒・電池材料は燃料電池や蓄電池に、電子材料は太陽電池に、構造材料は風力発電のブレードやタワーに結び付く。

*2) 元素戦略の考え方は、国内では2000年ごろに京都大学化学研究所で提案された「元素科学」から始まっている。元素戦略という用語は2004年に東京大学で提唱された。中国が(元素)資源保護計画を発表したのは2006年だ。

 文部科学省の計画では磁石材料ではジスプロシウムを最も希少と見積もっている。触媒・電池材料では白金、リチウムやコバルト、電子材料ではインジウムやガリウム、セリウム、構造材料ではニオブやモリブデンだ。

 国内でジスプロシウムが希少だと見積もられていることは分かった。国際的な評価はどうだろうか。一例として米国を見てみよう。

必要性と希少性を分けて考えるべき

 米エネルギー省は「原料戦略」という考え方に基づいた調査を進めており、2010年と2011年に報告書を公開している。2011年12月に公開された「2011 Critical Materials Strategy」では、クリーンエネルギー技術の開発、製造という点から重要な元素の分析を進めている。

 文部科学省は代替元素(材料)の研究開発に重点を置いている。米エネルギー省も研究開発を重視しているが、この報告書では市場における元素の必要性とリスクを分析している。必要性とリスクの両面から重要性を導いている。直接の関係はないものの、米エネルギー省の分析が戦略の基礎に相当し、文部科学省の計画は応用という形になっている。

 報告書が対象とした16種類の元素と、クリーンエネルギー技術関連の用途を図1に示す。左側に元素の名称が示されており、上半分は希土類(レアアース)だ。ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、ユウロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、イットリウム。下半分はそれ以外の元素だ。インジウム、ガリウム、テルル、コバルト、リチウム、マンガン、ニッケル。なお、図1では報告書で取り上げている元素のうちサマリウムが抜けているため、15種類が示されている。

 図1の横軸には元素の用途を挙げた。左から、薄膜太陽電池の発電層に使う半導体、風力発電用タービンの磁石、(電気)自動車の磁石と電池、照明の蛍光体だ。黒丸が元素と用途の関係を示す。例えば磁石ではプラセオジムとネオジム、ジスプロシウムが重要であることが分かる。

図1 クリーンエネルギー技術に必要な元素と用途。出典:米エネルギー省

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