契約電力を超えたら自家発電で融通、静岡の工場から東京電力管内の16拠点へエネルギー管理

富士フイルムグループがガスコージェネレーションとエネルギー管理システムを組み合わせて、広域の電力融通ネットワークを構築した。東京電力管内にある16カ所の工場やオフィスで使用する電力が契約値を超えそうな状態になると、足りない分を静岡県の工場から融通することができる。

» 2013年09月27日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 電力融通ネットワークの中核になるのは、富士フイルムの富士宮工場である。この工場ではガスエンジンを使ったコージェネレーションシステムをはじめとする大規模な自家発電設備が稼働している(図1)。発電した電力のうち1万1000kW分を確保して、関東一円に広がる富士フイルムグループの主要16拠点に10月1日から融通できるようにした。

図1 富士宮工場のガスコージェネレーションシステム。出典:富士フイルム

 富士宮工場は静岡県の東部にあって東京電力の管内に含まれる。自家発電した電力は各拠点が必要とする量を富士宮工場から東京電力の送電網に供給して、東京電力が配電する形をとる。工場からの電力供給が必要量に満たない場合には、足りない分を東京電力が補完する「部分供給」の制度を活用する。この制度を利用するために、富士フイルムは新電力(特定規模電気事業者)に登録して、10月1日から電力小売事業を開始できるようにした。

 富士フイルムグループでは電力融通の実施に先駆けて、主要な拠点の使用電力量をリアルタイムに把握するエネルギー管理システムを導入している(図2)。30分単位で使用電力の実績と予測が可能で、その予測値をもとに融通する電力量を決定する。各拠点が東京電力と契約している最大電力を超えそうな場合に、超過分を富士宮工場から融通する仕組みだ。

図2 主要拠点の使用電力量をリアルタイムに把握するシステム。出典:富士フイルム

 この電力融通ネットワークによって、夏の昼間など電力需要が最大になる時のピーク部分を自家発電でカバーすることができる。東京電力管内の電力不足を回避するのに貢献できるほか、各拠点の契約電力を引き下げて電気料金を安くすることも可能になる。大手の製造業が大規模な自家発電設備を活用して電力会社への依存度を下げる取り組みと言える。電気料金の値上げが相次ぐなか、東京以外の地域でも追随する企業が増えそうだ。

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