沖縄・宮古島で全島規模のエネルギー管理へ、家庭・事業所・農業をつなぐスマートシティ

沖縄本島から南西に300キロメートル離れた宮古島で、全島規模のエネルギー管理を実現するプロジェクトが動き出した。島内の家庭200世帯に加えて、事業所25カ所と農業用ポンプ場19カ所をネットワークでつないで、地域内の再生可能エネルギーを最大限に活用するためのシステムに挑む。

» 2013年10月03日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 離島で使う電力は“地産地消”が原則だ。島の中で作った電力を効率的に使わないと停電のリスクが常に生じる。対策は2つある。1つは島内の電力使用量をエネルギー管理システム(EMS)で制御できるようにして、需要と供給のバランスを最適化する。もう1つは再生可能エネルギーを拡大して、電力会社の火力発電所を補完できる電源を増やすことである。

 この課題に日本で先頭を切って取り組んでいるのが沖縄県の宮古島だ。2011年度から「宮古島市全島エネルギーマネジメントシステム実証事業」の準備を進めて、いよいよ2013年10月1日からEMSの運用を開始した(図1)。

図1 「全島EMS実証事業」の全体イメージ。出典:宮古島市企画政策部

 対象になるのは200世帯の家庭、25カ所の事業所、19カ所の農業用の揚水ポンプ場である。各拠点に電力の使用量を見える化するシステムを導入して、島全体の需要を調整するピークカットやピークシフトの可能性を2014年3月までの6カ月間で検証する。さらに2014年4月からはEMSで需要を制御するデマンドレスポンスにも取り組む計画である。

 全島レベルの展開を想定して、EMSは3段階で構成する(図2)。地域全体の需要と供給を管理するCEMS(地域エネルギー管理システム)を中核にして、家庭にはHEMS、事業所にはBEMSを導入する一方、農業用ポンプ場では既存の水管理システムから電力使用量のデータを収集する仕組みだ。各拠点とCEMSのあいだをサーバーで接続して、将来の機能拡張や規模拡大にも対応できるようにした。

図2 実証事業の対象とシステム構成(画像をクリックすると拡大)。出典:沖縄県、宮古島市ほか

 この中で注目すべきは、家庭のHEMSと連携するMDMS(メーターデータ管理システム)である。MDMSは政府が2020年代の前半までに全国の家庭や事業所に設置することを計画しているスマートメーター(次世代電力量計)を活用するうえで中核になるシステムだ。各メーターから送られてくる電力使用量のデータをもとに、時間帯に応じた電気料金を計算する一方、需給を調整するためにデマンドレスポンスなどを実施することが可能になる。

 宮古島の実証事業では「スマートボックス」と呼ぶ装置を家庭内に設置して、スマートメーターと同等の機能を実現している(図3)。電力の使用量などはタブレット端末に表示する。デマンドレスポンスを実施する場合にもスマートボックスとタブレット端末を組み合わせる形になる。

図3 家庭に設置する機器。出典:宮古島市企画政策部

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