山形県内最大級のメガソーラー、積雪対応の実験も進める自然エネルギー

山形県の下水道処理場を利用したメガソーラーが2013年10月に完成した。特徴は積雪の影響を調べるために、3種類の太陽電池モジュールを利用したこと。設置角度や耐荷重、積雪防止策などを工夫した。

» 2013年10月15日 14時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 山形県天童市と発電所の位置

 雪国で大規模太陽光発電を進めるには十分なノウハウが必要だ。年間を通じてどの程度の日射量が得られるかは分かっている。難しいのが雪への対応だ。地域により降雪パターンが異なる他、雪質も違う。これがどのように太陽光発電に影響を与えるか。

 POWER E NEXTが山形県で完成させたメガソーラー「山形浄化センターメガソーラー」(山形県天童市今町)は、雪の影響を確認する実験的な要素を盛り込んだ発電所だ(図1、図2)。発電所の最大出力は約2MW。県内最大規模をうたう。

 雪の影響を確かめるため、モジュールメーカーを3社選定し、それぞれの設置条件を変えた。「太陽光発電に関するデータを欲しいという県の要望に応えた形だ」(同社)。太陽電池モジュールの合計設置数は8172枚だ。

 カナディアンソーラーの多結晶Si(シリコン)太陽電池モジュール(出力240W、2088枚)は、30度に設置した。JCUの単結晶Si太陽電池モジュール(250W、4032枚)の設置角度も30度だ。ただし、耐垂直荷重が通常の2倍のモジュールを導入した。他社製品と雪害対策を比較するためだ。

 シャープの多結晶Si太陽電池モジュール(245W、2052枚)の設置角度は他の2社と異なる40度とした。「パネルの設置角度は山形であっても30度で対応できると考えている。40度にした理由は雪を素早く滑らせて、モジュール下にためる仕組みが役立つかどうかを調べるためだ」(同社)。天童市の2012年の積雪量は50〜60cmであるという。今回のメガソーラーでは全てのモジュールの最下部から地表まで1mを確保している。「シャープのモジュールの直下には深さ50cmの溝を作った。合計1.5mを確保するとどのような効果があるかをみる」(同社、図3)。

図2 山形浄化センターメガソーラー。出典:POWER E NEXT
図3 太陽電池モジュールを40度に設置した様子。この写真では溝は見えにくい。出典:POWER E NEXT

下水道処理場の有休地を利用

 メガソーラーを設置したのは地域の下水道処理場である最上川流域下水道山形浄化センターの敷地だ。山形県は将来の需要増を見込んで浄化センター内に予備の敷地を確保していたが、今後は需要が伸びないことが明らかになったため、メガソーラー事業用に貸し出すことを決定、2012年10月に公募型プロポーザル方式で事業者を募った。

 その結果、上下水道の維持管理や産業廃棄物の収集を手掛ける山形環境エンジニアリングが選定された。県の貸付面積は4万2026m2。1m2当たりの賃料は年110円である。同社は2012年12月に他社からの出資も合わせてエネルギー事業などを手掛ける企業としてPOWER E NEXTを設立、POWER E NEXTがメガソーラーの施設所有者となり、運営する形を採る。

 メガソーラーの総事業費は約7億5000万円。2013年4月に着工し、土木工事は升川建設と佐藤建設工業が担当、建築工事は伊藤建設が、電気設備工事はユアテックが実施した。もともと平たんなさら地であったため、整地や地盤改良は必要だったものの、大規模な造成工事は不要だったという。完成後の管理運営はPOWER E NEXTが担う。電気保安管理は山形環境エンジニアリングが担当する。

 完成後は固定価格買取制度(FIT)を利用して、20年間、全量を東北電力に売電する。想定年間発電量は207万kWhだ。

【更新情報】 10月15日、記事公開後に図2と図3を追加しました。

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