実は必要な「温室効果」、どうして?ウイークエンドQuiz(2/2 ページ)

» 2013年10月19日 00時10分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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正解:

 f. −20度

ミニ解説

 まず温室効果が生まれる仕組みに触れておこう。地球表面に降り注ぐ太陽光は波長の短い紫外線から波長の長い赤外線まで幅広い。強度が一番高いのは黄色い光だ。紫外線は大気上層部のオゾン層でほとんどが除去されてしまう。地表に届く光の総量としては、目に見える可視光が最も多くなる。

 可視光が地表に到達し、例えば体に当たると暖かく感じる。光のエネルギーがいったん熱に変わったためだ。地表で暖かくなった全ての物体は比較的波長の長い「遠赤外線」を発し、遠赤外線は最終的には宇宙に逃げていく。こうして、24時間、365日、太陽光に照らされていても、地表の温度が際限なく上昇することなく、昼夜や季節の移り変わりの中で上下するものの、一定の範囲にとどまっている。極地から赤道まで全ての地域の地表の温度を平均すると約14度になる。

 このような絵のどこに二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが登場するのだろうか。温室効果ガスは地表から出て行く遠赤外線を吸収する。その後、あらゆる方向に放出する。このため、本来は宇宙空間に逃げていくはずの光の一部が再び地表に向かっていく。このため、温室効果ガスがなかったときと比較して、地表の温度は高くなる。

温室効果がないと生命を維持できない

 外部から入ってくる光を全て吸収し、その後、遠赤外線として放出する物体(黒体)を地球と同じ位置に置いたとき、どの程度の温度になるのかは計算で求めることができる。約5.3度だ。従って正しい回答は「c. 5度」のように思える。

 この回答は誤りだ。温室効果ガスとは無関係に地球は入射光の約30%を反射している。雲や大気中の微粒子、地表面そのものが光を反射する。この効果を反映させると、−19度になる。最も近い回答は「f. −20度」だ。

 温室効果によって、本来よりも30度以上、地表の温度が高くなっていることになる。これによって植物の生育が可能になり、さまざまな生き物が生存可能な豊かな環境が維持されている。

 −19度という計算結果は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発表した「Climate Change 2007」による数値である。「Working Group I Report "The Physical Science Basis"」の第1章「Historical Overview of Climate Change Science」にある「Executive Summary」に概要が記されている。

図1 太陽から地球に入ってくるエネルギーが宇宙空間に逃げていくまでの流れ。出典:Climate Change 2007, Working Group I Report "The Physical Science Basis"

 図1は以上のようなエネルギーの流れをまとめたものだ。太陽から地球に向かって降り注ぐ光のエネルギーは1m2当たり342W(図中央上)、そのうち、77Wは上空で、30Wは地表で即座に反射されてしまう(図左)。(77+30)÷342=0.31。確かに31%が直接反射されている。入射光のうち168Wが地表に吸収される。

 図の右側は地表や大気から宇宙空間に逃げていくエネルギーだ*1)。最も大規模なのが地表からの熱放射の390W、そのうち324Wが温室効果ガス(Greenhouse Gases)によって地表に戻ってくる。雲の影響や大気との熱のやりとりが複雑なため、図が読みにくいものの、温室効果ガスが地表を暖めるためにいかに重要かということは分かる。

*1) 図中央にある、「Thermals」は、上昇温暖気流、「Evapo-transpiration」は水が蒸発するときの蒸発散量(蒸発熱)、「Latent Heat」は潜熱(水蒸気が凝集するときに起こる熱)、「Emitted by Atmosphere」は大気からの放出という意味だ。

温室効果ガスとは

 以上の説明から分かるように、遠赤外線の領域の光を効率良く吸収、放出できるガスは全て温室効果ガスとなり得る。二酸化炭素だけが温室効果ガスなのではない。先ほど紹介したIPCCの資料では水蒸気と二酸化炭素が最も影響の大きな温室効果ガスだとしている。

 アメリカ大気研究センター(NCAR)の研究者が執筆した論文「Earth's Annual Global Mean Energy Budget」によれば、晴天時の影響は水蒸気が60%、二酸化炭素が26%、オゾンが8%、メタンや亜酸化窒素などその他のガスの影響は6%だ。

 空気中の水蒸気を全て除去すれば温室効果の60%を無効にできるものの、水蒸気量を人工的に操作することは大変に難しい。たとえ可能であったとしても、同時に雨量も減ってしまう。これではだめだ。温室効果を抑制するなら二酸化炭素の量を減らすことが最も有効だということが分かる。

 なお、大気の主成分である窒素(大気の78%)と酸素(同21%)は温室効果ガスではない。

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