近海に広がる再生可能エネルギー、技術検証と環境影響評価へ世界に先駆ける洋上プロジェクト(4)(1/2 ページ)

2015年度まで続く福島沖の実証研究では、洋上風力発電の実用化に向けた技術面の検証に加えて、海洋生物に対する影響の評価や、地元の漁業と共存を図ることが重要なテーマになる。再生可能エネルギーで新しい産業を起こしながら、いかに豊かな自然を守るかが問われる。

» 2013年10月30日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

第3回:「超大型風車2基を2014年に建設」

 世界有数の洋上風力発電所を建設する海域は、事故を起こした福島第一原子力発電所から東へ20キロメートルほどのところにある(図1)。周辺の環境を破壊してしまった原子力発電所に代わって、自然にも人間にも悪影響を与えない風力発電所を実現できるのか。実証研究に課せられた使命は大きい。

図1 実証研究の実施区域。出典:福島洋上風力コンソーシアム

 広々とした近海で洋上風力発電を実現することができれば、福島県の復興につながる期待がある。実用化までに解決すべき技術的な課題の一方で、環境の保護や漁業との共存を果たすことも求められる(図2)。再生可能エネルギーが自然を破壊してしまっては導入する意味がない。

図2 実証研究の目的と課題。出典:福島洋上風力コンソーシアム

風車を制御して動揺を抑える技術

 技術面の検証項目のうち、最も重要なことは浮体式の設備の「動揺」を抑える方法だ。海に浮かぶ巨大な設備には、風のほかに波と潮の流れが大きな力として加わる(図3)。さらに送電ケーブルによる係留の力も無視できない。何しろ高さが100メートルを超え、重さが数10トンにもなる建造物が、4基も海に浮かぶ状態になる。

図3 浮体式の設備に作用する力。出典:福島洋上風力コンソーシアム

 3基の発電設備では風車の向きなどを制御しながら、動揺を低減させることに取り組む。それによって発電量がどう変わるかを検証して最適化を図る。超大型風車を使った第2期の実証研究の中には、最適な状態を作り出すための維持管理プログラムの開発も含まれている(図4)。

図4 第1期と第2基の発電設備(画像をクリックすると拡大)。出典:福島洋上風力コンソーシアム

 変電設備には各種の観測機器を搭載して、風向や温度などの気象条件、波浪や流速などの海象条件を測定できるようになっている(図5)。気象・海象と動揺や発電量の相関を分析することで、洋上風力発電所を安定的に稼働させる手法を探り出す。

図5 変電設備の観測機能。出典:福島洋上風力コンソーシアム

 第2期を終了する2015年度末までには、浮体式の発電・変電設備の実用化に必要な技術を確立することがプロジェクトの目標だ。世界に先駆けて日本の近海に大規模な洋上風力発電所を展開する第一歩になる。

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