太陽電池は「再生」できるのか?ウイークエンドQuiz(2/2 ページ)

» 2013年11月02日 01時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
前のページへ 1|2       

正解:

 d. 2日分

ミニ解説

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、みずほ情報総研に委託した研究の報告書に、今回の質問の答がある。2007〜2008年に実施された「太陽光発電システムのライフサイクル評価に関する調査研究」だ*1)

 成果報告書の「3.5 太陽光発電システムのエネルギー消費量とCO2排出量に関する評価結果」が該当部分だ。ここではシリコン(Si)系太陽電池を含む5種類の太陽電池についてエネルギーの収支を評価している。結晶Si、単結晶Si、アモルファスSi/単結晶Siヘテロ接合(いわゆるHIT太陽電池)、薄膜Siハイブリッド、CIS系が対象となっている。

 国内の太陽電池の過半数は多結晶Siを用いている。住宅用のごく標準的と考えられる例として出力3.9kW(モジュール変換効率13.9%)のシステムを評価。このシステムを1年間運転すると、3863kWhの電力が得られる。

 このシステムを原料から作り上げ、破棄するまでにエネルギーを消費する過程が5つある。モジュール製造、周辺機器(BOS)製造、製品輸送、交換部品供給、使用後処理だ。

 5つの過程を合計すると8万6395MJのエネルギーを使う。しかし、使用後処理(廃棄)に必要なのはわずか233MJと少ない。8万6395MJのエネルギーを発電でまかなうと約2.2年分に相当する。ということは、廃棄に必要なエネルギーは0.006年分だ。正解は「d. 2日分」となる。

リサイクルすると有利になる

 なお、研究報告書には太陽光発電システムを廃棄せず、リサイクルした場合の評価も記されている。産業レベルのリサイクルが実現できていない段階では、効果が薄い。それでも、古い太陽電池の部材のうち、利用できる部分を新しい太陽電池に使うと、エネルギー消費量が7282MJ減る。なぜなら、最も比重が高いモジュール製造工程の消費エネルギーを削減できるからだ。この場合、2.02年で「5つの過程+リサイクル」のエネルギーを回収できる。

 大規模なリサイクル処理が可能になった時点では全くリサイクルをしないときと比較して、消費エネルギーが2万3810MJも減る。このため、全エネルギー回収に必要な期間は1.65年へと短くなる。

 この結果から何が分かるだろうか。太陽光発電システムは廃棄するよりも、リサイクルした方が明らかに得ということだ。新規に製造した時に必要となるエネルギーの3割をリサイクルで浮かす効果は大きい。

 今回の質問は、過去のウイークエンドQuiz「太陽電池の製造に掛かった電力は何年で取り返せる? 」とも関係が深い。興味を感じた方はぜひ参照していただきたい。

*1) NEDOの成果報告書データベースのページに登録すると閲覧できる。成果報告書検索ページでキーワードに「太陽電池」、管理番号に「20090000000073」と入力すると271ページのPDF文書をダウンロードできる。

テーマ別記事一覧

 自然エネルギー   クイズ 


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.