「窓ガラス」は電気料金に関係がある?ウイークエンドQuiz(2/2 ページ)

» 2013年11月08日 22時30分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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正解:

 d. 65%減

ミニ解説

 東京都都市整備局が2009年4月に公表した「住宅の省エネリフォームガイドブック」にはリフォームによって戸建住宅の断熱性能を高める手法が示されている。窓などの開口部の断熱性能向上が最も重要だという(図1)。

図1 戸建住宅に占める熱伝導経路。出典:東京都都市整備局

 図1左は冬季の例だ。外気温が−2.6度、室内が18度だったとすると、室外に逃げる熱の58%は窓などの開口部を通る。夏季に外気温が33.4度、室内が27度だったとすると、開口部から侵入してくる熱は全体の73%にもなる。もちろん窓は閉まっている*1)

 この数値を見れば、「窓からの熱の出入りを抑制すること=空調費の削減」という図式が成り立つ。幸い窓は屋根や床と比較してリフォームしやすい。

どのような窓が効果的なのか

 東京都の資料は窓ごとの断熱性能の違いも示している。利用したデータは日本建材・住宅設備産業協会が公表した値だ。最も安価な窓は、アルミサッシと単板ガラスの組み合わせだろう。アルミサッシは熱伝導性がよく、ガラス1枚だけが室内と室外を隔てている。つまり熱の出入りが大きい。

 この場合の熱が逃げる度合い(熱貫流率:m・K/W)を100としよう。複層ガラスに置き換えるだけで71.4に数値が下がる。複層ガラスとは、「板ガラス、乾燥した空気層、板ガラス」という構造を採るもので、二重ガラス、ペアガラスとも呼ばれる。

 次に、アルミサッシ部分をアルミ樹脂複合サッシに置き換えると53.5に下がる。アルミニウムを通じた熱伝導が意外に大きい。アルミニウムの熱伝導性能は貴金属や銅に次ぐ。クイズの解説からはそれてしまうが、調理器具にアルミニウム合金が利用される(=熱が伝わりやすい)ことを考えると、単純なアルミサッシではまずいことが理解できる。

 さらに断熱性能を高める手法もある。複層ガラスのガラス部分を改善した高断熱複層ガラスだ。熱が逃げる度合いは35.7に下がる。高断熱複層ガラスにはさまざまな種類があり、最も広く使われているのは片方のガラスの表面に非常に薄い金属膜をコーティングした低放射(Low-E:Low Emissivity)ガラスを用いるものだ(図2)*2)

図2 Low-E複層ガラスの構造。出典:旭硝子

 Low-Eガラスの使い方は2種類ある。断熱性能を高める目的と、遮熱性能を高める目的だ。断熱性能を高めるには、室内側のガラスの空気層面に金属膜を付ける。すると、室内の熱(遠赤外線)が逃げにくく、太陽光のほとんどは透過する。寒冷な地方に向く。

 遮熱性能を高めるには、室外側のガラスの空気層面に金属膜を付ける。すると、夏は太陽光を遮断する効果が強く働き、冬季は室内の熱が外に逃げにくくなる。一年を通じて利用しやすい。

 なお、2枚のガラスにはさまれた空間にある乾燥空気をアルゴンガスに置き換えることで、さらに空気自体の熱伝導を抑えた製品もある。

*1) 日本は南北に長く、地方によって気候が異なる。そこで、住宅の省エネルギー基準では国内を6つの地域に分けて各地域で必要な断熱性能を求めている。図1で示したのは区分IVの例である。区分IVには34の都府県が含まれている。

*2)旭硝子、日本板硝子、セントラル硝子の3社はLow-E複層ガラスを「エコガラス」と呼んでいる。旭硝子によれば、1枚の板ガラス(厚さ3mm)の熱貫入率(U値)を5.1とすると、複層ガラス(3mm、12mmの空気層、3mm)は2.5、エコガラス(Low-Eの3mm、12mmの空気層、3mm)は1.5まで下がるという。

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