政府が改訂案を検討中の「エネルギー基本計画」の大筋が明らかになった。12月6日に開催した「総合資源エネルギー調査会」で素案をまとめたが、その内容は具体性を欠くばかりで、数値目標の大半は旧・民主党政権時代に公表したものと変わらない。
国のエネルギー基本計画は3年に1回の頻度で見直すことになっている。前回は2010年で、その後に東日本大震災が発生したため、今回2013年に実施する改訂は大きな方向転換が求められている。注目を集める原子力発電の方針に関しては、以下のような表現を盛り込む見通しだ。
「原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより可能な限り低減させる。その方針の下で、我が国のエネルギー制約を考慮し、安定供給、コスト低減、温暖化対策、安全確保のために必要な技術・人材の観点から、必要とされる規模を十分に見極めて、その規模を確保する。」
これまで原子力発電を推進する立場をとってきた安倍政権だが、「可能な限り低減させる」とトーンダウンしている。実際にどの程度の発電規模を原子力で供給するかは、今後の再稼働の状況を見極めたうえで、次回の改訂時期である2016年までに決定する方針である。
一方で次世代自動車などによる省エネルギーの推進、火力発電やコージェネレーションによる化石燃料のクリーン化、太陽光や風力を中心とする再生可能エネルギーの拡大については、旧・民主党政権時代に策定した方針をほとんどそのまま引き継ぐ。新たにスケジュールを明確にした政策の中で注目されるのは以下の項目である。
このほかの数値目標は旧・民主党政権が2012年に策定したエネルギー戦略と同じだ。電気自動車や燃料電池自動車などを2030年までに新車販売の7割にする、家庭用のコージェネレーションである「エネファーム」の設置台数を2030年までに全世帯の1割に相当する530万台に拡大する、などの目標値は修正しない(図1)。
以上のような改訂案を盛り込んだエネルギー基本計画は閣議で決定すると有効になり、それ以降のエネルギー政策の基本になる。総合資源エネルギー調査会が示した素案をほとんど変更することなく年明けの閣議で決定するとみられる。
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