「潮の満ち引き」から利益は出るのか?ウイークエンドQuiz(3/5 ページ)

» 2013年12月22日 04時30分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

フランスでは寿命とコストを実証済み

図3 ランス潮汐発電所(赤)とパリ(黄)の位置

 潮汐発電所として長い間、世界一の座にあったのが、フランスのランス潮汐発電所(Usine marémotrice de la Rance)だ(図3)。ブリュターニュ半島の北側、ブルターニュ地域圏イルエビレーヌ県の北端でサンマロ湾(イギリス海峡)に流れ込むランス川の河口を利用している。

 図4はランス川上空からほぼ北を向いてランス潮汐発電所を含む河口の堤防を見たところだ。堤防の右端、白い水が見える部分の海面下にタービンが埋め込まれている。図では見にくいが、堤防の左端には垂直軸の周りを回転する水門が2組取り付けられており、水路として解放できる構造を採っている。この水路を年間1万8000隻の船舶が通過している。堤防上には4車線の道路があり、時刻表に従って定期的に跳ね上げ橋を上げている。

図4 ランス川をまたぐランス潮汐発電所。出典:Wikimedia(File:Barrage de la Rance.jpg)

 ランス川河口付近では古くから脱穀に潮汐力を利用していた。最大潮位差が13.5m(平均潮位差8.5m)あることが知られており、潮汐発電所に利用しようという案は、既に1923年に生まれていた。第二次世界大戦後の1961年、河口に長さ750mの堤防の建設を開始、続いて1963年に発電所の建設を開始し、1966年に完成している。送電を開始したのは1967年12月、実に47年前のことだ。世界初の商用潮汐発電所であり、40年以上、規模においても最大だった。発電量が多くなるよう、堤防のどちらの海水面が高い場合でも発電ができるよう設計されていた。

 個別のカプラン水車に接続された発電機の出力は10MW、これが24基あり、最大出力は240MWだ(平均出力は約68MW)。同発電所を運営しているフランス電力(EDF)が公表した「DOCUMENT DE RÉFÉRENCE RAPPORT FINANCIER ANNUEL 2012」によれば、通算の平均発電量は年間50万MWh(5億kWh)、2012年は50万3000MWhだった。これはブルターニュ地域圏全体の年間消費電力量の3.5%に相当するという。

 ランス潮汐発電所の最大の特徴は発電量が大きいことだ。だが、他の発電所にない貴重な経験が得られたことが重要だ。50年近い長期間の運転に問題がないことを実証しており、発電コストが安いことも分かった。このような性質は電力源として大規模な水力発電所とよく似ている。

 ランス潮汐発電所の建設費用は6億2000万フランである。これは2010年の貨幣価値に換算して7億8800万ユーロに相当するという。建設費用は長年の発電で全て回収している。

 再生可能エネルギーに関する国際ネットワークであるREN21(Renewable Energy Policy Network for the 21st Century)が2013年6月に公開した「RENEWABLES 2013 GLOBAL STATUS REPORT」によれば、潮汐発電の発電コストは出力1〜250MWの場合、21〜28米ドルセント/kWhである。これは発電所の設計、建設から運営、廃止までの全てのコストを、生涯発電量で割った均等化発電原価(LCOE)の値だ。加えて、建設時の資本コストは5290〜5870米ドル/kWだとした。

 なお、EDFは2008年7月に潮汐ではなく潮流発電に向けた実証実験用のタービンファームを立ち上げる計画を発表、建設地はランス潮汐発電所の隣県であるブルターニュ地域圏のコートダルモール県パンポル市だ。2011年10月から2012年1月までを第1期とし、設置とテストを終えている。2013年9月には4基のタービンから2MWの出力を得る計画について事業者の入札を開始した。総事業費は4000万ユーロ。入札開始時にはフランスのフランソワ・オランド大統領自ら、自国には全欧州の潮力ポテンシャルのうち、20%が眠っていることを指摘し、2020年までに最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を23%に高める計画に役立つとした。

 韓国の計画とフランスの計画は相互に関係がなく、取り組みを開始した時期や経緯も全く異なる。しかし、大規模な潮汐発電所を立ち上げ、その後、小規模な潮流発電所の導入を試みるという開発の流れはよく似ている。

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