南洋に浮かぶトンガ、マイクログリッドで電力の1/8を調整自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2013年12月26日 19時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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マイクログリッドの役割は?

 トンガは169の島からなる島国だ。富士電機がシステムを納入するトンガタプ島には首都ヌクアロファがあり、全人口の7割(7万5000人)が集まっている。島の面積は260km2。鹿児島県の徳之島(248km2)や沖縄県の西表島(289km2)の面積に近い。

 独立した小さな島で再生可能エネルギーを導入する場合の課題の1つが、出力の変動をどう抑えるかだ。日本の本州のように幅広い地域に太陽光発電所が分散していれば、個々の発電所の細かい出力変動は互いに打ち消し合うことが分かっている。蓄電池導入の優先度は低い。しかし、小さな1つの島で完結しなければならない場合は、電力を蓄積する何らかの装置と組み合わせて変動を吸収する必要がある。

 そこで、1MWの太陽電池モジュールと発電、系統接続に必要な機材一式と併せて、出力変動を吸収する装置と制御装置を導入する。出力変動には「出力500kWのリチウムイオンキャパシタ2基を使い、制御にはマイクログリッドコントローラーを導入する」(富士電機)。

 リチウムイオンキャパシタは、名前の通り、確かにリチウムイオンを含んでいる。しかし、リチウムイオン蓄電池とはかなり性質が異なる蓄電装置だ。リチウムイオン蓄電池と比較すると、電力の出し入れに必要な時間が短く(出力が大きく)、繰り返し利用に強い。具体的には出力密度が1桁大きく、サイクル寿命は2桁以上長い。ただしエネルギー密度はリチウムイオン蓄電池よりもいくぶん劣り、比較的高価である。

 マイクログリッドとは、電力の需要地のそばで小型発電機を利用する分散電源技術の1つだ。送電設備に対する投資と送電ロスを省き、災害リスクを低減する目的で導入されることが多い。

 富士電機は、九州電力と沖縄電力の実証実験に協力し、鹿児島県と沖縄県の6カ所9島に「離島マイクログリッド」を納入済みだ*4)。実証実験では電力の需給バランスを確保する出力変動の補償と出力や負荷の変動による周波数変動の補償、ピークシフト運転を試みている。発電所側の出力情報と電力需要量情報を取り込み、管理下にある蓄電池の充放電量を制御するというものだ。これらの実績をトンガでも生かす。

*4) 鹿児島の黒島と竹島、トカラ列島の4島、沖縄県の北大東島と多良間島、与那国島に導入した。沖縄県の事例では全てリチウムイオンキャパシタを利用している。サイクル寿命に加えて耐環境性が高いからだとした。

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