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» 2014年01月07日 07時00分 UPDATE

2014年の電力メガトレンド(2):電気料金の上昇は止まる、自由化と原子力が抑制効果

2014年4月に中部電力が値上げを実施すると、過去2年間で電力会社10社のうち7社目になる。しかし今後さらに電気料金が上昇する傾向は続かない。各社とも値上げ後に販売量が低下して苦戦を続けている。これから原子力発電所の再稼働が徐々に始まり、燃料費の問題は解消されていく。

[石田雅也,スマートジャパン]

 モノやサービスの価格が需要と供給で決まるのは市場経済の常識である。これまで電力市場では規制によって価格が調整されてきたが、ようやく自由競争の状態へ移りつつある。電力会社が価格を引き上げれば、それに合わせて需要が減るようになった。利用者側で節電対策が進むのと並行して、価格競争力のある新電力が勢力を広げている。

 こうした一連の流れが2014年にさらに加速する。主な要因は2つある。1つ目は電力会社の燃料費の問題である。現在の電気料金は燃料費の変動に合わせて単価が毎月変わる。東京電力の家庭向け電気料金の標準額を見ると、2012年9月に値上げを実施した後でも1年間に5%以上も高くなっている(図1)。燃料費の増加によって調整額が上乗せされているためだ。

ryokin_toden_sj.jpg 図1 東京電力の家庭向け電気料金の推移(画像をクリックすると拡大)。出典:東京電力

 ところが2013年9月から10月をピークに、燃料費の増減による調整額は下落傾向に転じた。LNG(天然ガス)の供給量が増えて価格が下がり始めたからで、この傾向は今後も続く可能性が大きい。

原子力の再稼働で値下げもある

 2つ目の要因は原子力発電所の再稼働だ。すでに6社が原子力規制委員会に安全審査を申請済みで、2014年から2015年にかけて相次いで再稼働を始めることが予想される。それに伴って火力発電の比率が低下して、電力会社の燃料費は減っていく。

 過去2年間に電気料金を値上げした電力会社は、原子力発電所の再稼働を前提に原価を算出している。このため計画通りに再稼働できなければ燃料費は増加する可能性がある。それでも料金の再値上げは現実的に難しく、内部コストの削減で乗り切るしかない。もし再稼働が可能になれば、むしろ電気料金を引き下げる余力さえ生まれてくる。

 実際に日本の電気料金は2010年度まで減少傾向を続けてきた(図2)。震災後の2011年度から上がり始めて、おそらく2014年度も各社の値上げの影響によって上昇する。ただし2015年度には燃料費が低下して、ほぼ横ばいの状態に落ち着く見込みだ。

ryokin_meti_sj.jpg 図2 電力会社の電気料金単価の推移(画像をクリックすると拡大)。出典:経済産業省

新電力の市場シェアが急上昇

 電力会社を取り巻く燃料費の問題に加えて、新電力の勢力拡大が進んでいく。新電力の市場シェアは2012年度まで伸び悩んでいたが、2013年度の上期に一転して急上昇した(図3)。電気料金の値上げを受けて企業や自治体が価格の安い新電力に切り替え始めたからだ。

pps_share_meti_sj.jpg 図3 新電力の販売量シェア(資源エネルギー庁による)

 これまで新電力の市場シェアが伸びなかった最大の理由は、販売できる電力量が少なかったことによる。震災後に発電事業者が増加して、卸電力市場の取引量も大幅に増えたことで、販売する電力を確保しやすくなった。今後ますます電力の流通量が拡大していくことは確実な情勢だ。

 現在は電力会社(法律上は「一般電気事業者」)を中心にした垂直統合型の市場構造になっていて、発電・送配電・小売のすべてを電力会社が支配している(図4)。このうち発電と小売は新規参入が認められていて、特に震災以降は新しい事業者が急速に増えてきた。

jigyousha_meti_sj.jpg 図4 電力市場の現在の構造。出典:経済産業省

 3年後の2016年から始まる小売の全面自由化を待つまでもなく、発電と小売の競争は始まっている。もはや電力会社の思惑だけで電気料金が決まる時代は終わり、2014年が大きな転換期になる。

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