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» 2014年01月14日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2013年版(41)佐賀:イカの本場で潮流+風力発電、近海に浮かぶ水車と風車が電力を作る

佐賀県には全国に例のない再生可能エネルギーの取り組みが多い。イカで有名な呼子町の沖合では、世界初の潮流+風力によるハイブリッド発電設備が動き出す。成功すれば近海に数多く展開可能になる。メガソーラーは遺跡の近くや道路の脇にまで設置して、長い日照時間を最大限に生かす。

[石田雅也,スマートジャパン]

 東シナ海から日本海を北上する対馬海流は、佐賀県の近海にさまざまな魚介類をもたらす。イカの本場として全国に知られる呼子町(よぶこちょう)の沖合で、斬新な方法の発電プロジェクトが進んでいる(図1)。洋上の風力に加えて海中の潮流でも発電する、世界で初めてのハイブリッド発電の試みである。

yobuko.jpg 図1 潮流+風力によるハイブリッド発電設備の設置予定海域。出典:佐賀県農林水産商工本部

 発電設備の外観からして、通常の風力発電と大きな違いがある。3枚の大きな羽根の代わりに、3本の長い柱が円筒状に回転する仕組みだ(図2)。風向きが変わっても回り続けるのが特徴で、重心が低いために洋上でも安定性が高い。回転する範囲が狭く、設置スペースは小さくて済む。

skwid1.jpg 図2 呼子町の沖合に設置するハイブリッド発電設備の外観。出典:三井海洋開発

 さらに注目すべき特徴が海中の潮流発電設備である。円筒を縦方向に2つに切った構造の水車になっていて、潮流の圧力で回転しながら発電する。潮の流れは天候の影響を受けにくく、安定した発電量を得ることができる。発電能力は50kWと小さいものの、風力と合わせれば1MW(メガワット)級になり、風が弱い時でも電力を供給し続ける(図3)。

skwid3.jpg 図3 ハイブリッド発電設備の仕組みと性能。出典:三井海洋開発

 このハイブリッド発電設備は三井海洋開発が建造して、呼子町の沖合で実証実験に乗り出す予定になっている。本来は2013年10月に運転を開始する計画だったが、輸送中のトラブルで延期された。重大な問題が発生していなければ、洋上に浮かんだ状態で動き始める。

 ちなみに発電設備の名前は水車の形式などを略して「skwid(スクイッド)」と付けられた。イカの英語名である「squid」にもかけられていて、呼子町で実施するプロジェクトにふさわしい。いずれは洋上に浮かぶ発電設備としても呼子町の“イカ”が全国に知れ渡る期待がある。

 佐賀県内ではハイブリッド発電のようにユニークな再生可能エネルギーの取り組みが数多く見られる。太陽光発電では福岡県の大牟田市と佐賀県の鹿島市を結ぶ新設の「有明海沿岸道路」に沿って、細長くメガソーラーを建設する計画がある。

 全長55キロメートルの自動車専用道路のうちの2キロメートルの区間を対象に、道路脇の法面(のりめん)に太陽光パネルを設置する(図4)。全体の面積は1万平方メートルになり、発電能力は1MW程度を見込める。事業者を募集中で、2014年度中に発電を開始する予定だ。実現できれば、さらに延長する可能性もある。

ariake_road.jpg 図4 「有明海沿岸道路」のメガソーラー建設予定区間(画像をクリックすると拡大)。出典:佐賀県交通政策部

 佐賀県は全国でも日照時間が長く、遊休地を活用したメガソーラーの建設が相次いでいる。すでに稼働した設備の中では、遺跡で有名な吉野ヶ里(よしのがり)のメガソーラーが12MWの発電規模で最大だ。

 もともと工業団地として開発した場所だったが、企業の誘致が進まず、新たな活用策としてメガソーラーの建設に至った。遺跡に隣接する16万平方メートルの広大な土地に5万枚の太陽光パネルを設置した(図5)。年間の発電量は1285万kWhになる想定で、一般家庭の3600世帯分に相当する。

yoshinogari.jpg 図5 「吉野ヶ里メガソーラー発電所」の全景。右手前の方角に遺跡が広がっている。出典:NTTファシリティーズ

 佐賀県は住宅用の太陽光発電システムの普及率では全国で第1位である。ただしメガソーラーを含む非住宅用が少ないために、太陽光発電全体では25位にとどまっている(図6)。今のところ導入量が多いのは小水力発電と風力だ。

ranking2013_saga.jpg 図6 佐賀県の再生可能エネルギー供給量。出典:千葉大学倉阪研究室、環境エネルギー政策研究所

 小水力発電はダムにも広がり始めた。最も新しいプロジェクトは県営の「中木庭(なかこば)ダム」で進んでいる(図7)。治水用に2008年に完成したダムで、下流に向けて一定の水量を送り出す役割がある。その水流を生かして約200kWの発電を可能にする。年間の発電量は125万kWhを見込んでいて、2016年4月に稼働する予定だ。事業者は九州電力を含む連合体である。

 九州電力は2012年に新設された国営の「嘉瀬川(かせがわ)ダム」でも、規模の大きい水力発電を実施している。70メートルの落差を生かして、発電能力は最大で2.8MWに達する。年間に1660万kWhの電力を供給することができる。これ以外にも県内にあるダムには水力発電の可能性が残っている。

nakakoba.jpg 図7 佐賀県内のダムと「中木庭ダム」(画像をクリックすると拡大)。出典:佐賀県ダム管理事務所

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