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» 2014年02月21日 15時00分 UPDATE

安全・安心・信頼できる風力発電所(2):第2回:風力発電の風況・海洋調査

風力発電所の安全性のみならず事業の採算性にも大きく影響するのが「風況」である。年間を通じた風の向きや強弱を調べることによって、発電量を予測しやすくなる。陸上でも洋上でも発電機の設置場所が少し変わるだけで発電量が大きく変化することもあり、事前の風況・海洋調査は欠かせない。

[川口昇/UL Japan,スマートジャパン]

第1回:「風力発電の最新動向」

 風力発電所は太陽光発電所と異なり、絶えず大きく変化する風を発電のエネルギーとして使う。太陽光発電も季節・時間・天候の影響を受けるものの、発電予測のツールが普及しており、太陽光パネルを一定の方向で一定の角度の架台に取り付けて設置することにより、発電量とそのリスクを予測できる。

 これに対して風力発電は、風の向きや強弱、さらに地形や風力発電機同士の干渉などによる影響が大きい。風の向きや強弱などをまとめて「風況」と呼ぶが、季節・時間・天候により24時間絶え間なく変化するため、発電予測がより複雑で難しくなる。台風などの強風が吹く時には、風車を安全な向きで停止させる必要があり、状況によっては事故に至る可能性がある。

風況調査の測定データは十分に集める

 陸上の風力発電所の場合には、山の尾根など地形が複雑な場所に設置されるケースが少なくない。発電機の設置場所によっては発電量が大きく変化して、事業の採算性に影響を及ぼす可能性がある。そのため設置する前に通常は1年以上の期間をかけて風況調査を行うことが、欧米では標準的なプロセスになっている。

ul_fig2_1_sj.jpg 図1 ドイツの風力発電リサーチプロジェクト「FINO1」の測定塔。出典:DEWI GmbH

 風況調査には風向き、風力、気温、湿度、天候などの気象条件を測定できる各種のセンサーを使用する。最低1本のマスト(測定塔)にセンサー類を取り付け、1日24時間、さらに1年間を通じて測定してデータを蓄積する(図1)。地形と広さによっては1本のマストでは十分でない場合があり、予算と必要性に応じて複数のマストを設置して測定する事例もある。

 風力発電所の設置予定地の近くには、風に関する気象情報を観測している設備が存在している場合がある。そのデータを入手して実測値と比較する方法も有効である。長期の観測データを、実測した短期データと重ね合わせて解析すると、より確実な風況調査を行うことができる。

洋上風力は海洋調査で環境影響を評価

 洋上に設置する風力発電所では、海面は陸上と比べて平坦ではあるものの、設置場所が海底であるために別の要因を考慮しなくてはならない。海底の地形は必ずしも平坦ではなく、加えて波・海流・侵食などがマストに影響を与えるからである。

 洋上風力発電においても、風況調査は極めて重要である。さらに騒音や海流の変化など環境に与える影響が無視できないために、海洋調査も合わせて実施する必要がある(図2)。

ul_fig2_2_sj.jpg 図2 北海における大規模洋上風力発電所「alpha ventus」の試験サイトと「FINO1」(左前方)。出典:DEWI GmbH

 こうした事前の風況・海洋調査を通じて、安全・安心・信頼できる風力発電所を設置するための基礎的な情報を集めることのメリットは大きい。収集・分析したデータは発電所のオーナーだけではなく、さまざまなステークホルダーに向けた情報サービスにも利用することができる。

 次回は風況・海洋調査のデータを活用した2種類の事業評価方法について説明する。1つはマイクロサイティング/サイトアセスメント、もう1つはデューデリジェンスである。

第3回:「風況・海洋調査データを活用した事業評価方法」

著者プロフィール

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川口 昇(かわぐち のぼる)

UL Japanマーケティング部部長。電機メーカー在職中に通算10年間にわたって欧米の現地法人でマーケティング関連の業務に従事。その後アメリカの安全認証機関ULの日本法人であるUL Japanに勤務し、風力発電など再生可能エネルギー分野の規格開発支援、普及、政府工業会に関する活動を北米本社と連携して行う。


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