メタノールで10時間発電、出力1.5kWの燃料電池が登場蓄電・発電機器

豊田通商は東京で開催された「第10回国際水素・燃料電池展」において、メタノールを使う燃料電池「OorjaPac」の動作デモを見せた。米Oorja Protonicsの製品である。出力が1.5kWと高いながら、小型軽量であることを特徴とする。

» 2014年03月04日 16時20分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 「米国で採用実績がある小型・軽量の燃料電池を国内で展開する」(豊田通商)。豊田通商が取り組むのはメタノール(メチルアルコール)を使う出力1.5kWの燃料電池だ。メタノールは工業で幅広く使われており、入手しやすく、水素などと比較すると運搬や管理が楽だ。

 米Oorja Protonicsが開発した「OorjaPac」を、東京で開催された「第10回国際水素・燃料電池展(スマートエネルギーWeek2014)」(2014年2月26〜28日)に出展、発電する様子をデモした(図1)*1)

*1) 豊田通商は2014年2月24日にOorja Protonicsと日本市場への事業展開に関する総代理店契約を締結している。Oorjaはヒンディー語でエネルギーという意味。

図1 OorjaPacの外観

 製品の仕様を図2に示す。OorjaPacは事務机の上に置くことができるほどのサイズだ。「北米市場では可搬型、定置型、いずれも実績がある。可搬型ではフォークリフト用の電源として利用されており、定置型では携帯電話の基地局に採用された。これはメキシコの事例だ」(豊田通商)。

 可搬型の製品は内部にメタノールタンク(12L)を備えており、10時間動作する。定置型では系統に連系されていない立地で主電源として利用するため、大型の外部タンクを接続して使う。

図2 OorjaPacの仕様

起動時間が短い

 OorjaPacはダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)と呼ばれるタイプの発電機器だ。国内の燃料電池市場では水素を用いる固体高分子形燃料電池(PEFC)や同じく固体酸化物形燃料電池(SOFC)が利用されている。PEFCは燃料電池車(FCV)の電力源であり、エネファームにはPEFCか、SOFCが利用されている。

 「水素を使う燃料電池と比較して起動時間が短く、出力当たりの体積が小さいことが特徴だ」(豊田通商)。約5分で起動する*2)

*2) 起動までの5分間を補うために小容量の鉛蓄電池などを接続するソリューションもあるという。

 燃料に使うメタノールは50%水溶液だ。「100%のものは出力も大きいが、国内で100%のメタノールを大量に貯蔵しようとすると法的な規制が厳しい。そこで、灯油並みの規制で済む50%水溶液で動かすようにした」(豊田通商)。

メタノールから水素を分離

 DMFCの動作原理を図3に示す。メタノール(CH3OH)と水(H2O)が反応し、水素イオン(H)と二酸化炭素(CO2)ができるという反応だ。メタノール1分子当たり、電子を6個取り出すことができるため、原理上は効率のよい燃料電池を作り上げることができる。

 「DMFCでは未反応のメタノール分子が水素イオンと一緒に移動してしまうクロスオーバー現象が知られている。効率が低下する原因の1つだ。OorjaPacではこの現象を防ぐことに成功している」(豊田通商)。100%濃度のメタノールで動作させた場合の効率は37〜40%に達するという。

 図3では、左上からメタノールが入り、燃料極(Anode)で反応し、二酸化炭素が左下に排出される。反応で放出された電子は外部に取り出し、水素イオンは電解質を右に向けて移動する。空気極(Cathode)で水素イオンが右上から来た酸素と結合し、水となって右下に出て行くという流れだ。

図3 DMFCの動作原理

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