LED照明を追い抜くか、「有機EL」で131ルーメン/ワットを達成LED照明

コニカミノルタが白色有機ELパネルの発光効率を急速に高めている。2014年3月に発表した開発品の効率は131ルーメン/ワット。これは2013年10月に公開したパネルと比較して27%も向上しており、世界最高記録を主張する。調光機能や極薄パネルなど効率改善以外の開発も続けており、いずれも試作品のデモを公開する予定だ。

» 2014年03月06日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 コニカミノルタは2014年3月、開発中の白色有機EL照明パネルの発光効率が131lm/W(ルーメン/ワット)に達したと発表した(図1)。世界最高記録だという。

図1 白色有機EL照明パネルの開発品 出典:コニカミノルタ

 「開発品は直接製品化を目指したものではなく、今回高効率化に寄与した技術を製品に搭載する形になる。131lm/Wという効率は既に一般のLED照明を上回っており、このまま製品化しても見劣りしない。今後も研究開発を続け、より高い効率を目指す」(コニカミノルタ)。

 開発品の発光面積は15cm2。図1に示したようにごく単純な照明器具の形に仕上げている。

効率以外に照明としての機能も追求

 同社は新規事業の柱として有機EL照明パネルの開発を長期的に継続している。2006年に効率64lm/W(輝度1000cd/m2)の白色有機ELパネルを開発。2011年10月には同じ性能の製品を商品化済みだ。

 74mm角のパネルであり、当時、生産開始が明らかになっていた製品と比較して、世界最高レベルの発光効率をうたっていた。当時から、後ほど説明する「りん光」を全面的に利用している。

 2014年2月には世界初を主張する調色機能付きのフレキシブル有機EL照明パネルの試作品「Irodori」を、ドイツで開催される照明・建築の展示会「Light+Building 2014」(2014年3月30日〜4月4日)に出展することを発表(図2左)。調色タイプのパネルでありながら、面内の均一な発光を実現したという。

 同時に世界最薄をうたうフレキシブル有機EL照明パネル「ibuki」も出展する。厚みは100分の7mm(70μm)であり、風力で空中に浮かべたデモンストレーションを行う。

 照明のバリエーションとして欠かせない調色機能はもちろん、他の照明技術では実現が難しい仕様の製品開発が可能であることを見せつける形だ。

図2 ドイツの展示会に出展を予定する有機ELパネル 出典:コニカミノルタ

効率向上の手法は2つ

 白色有機EL照明パネルの効率を高めるため、同社は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の開発プロジェクトに参加してきた。2010年からNEDOが実施している「次世代高効率・高品質照明の基盤技術開発」プロジェクトでは、有機EL照明の委託先として選ばれている。2013年10月にはその成果として発光効率103lm/Wを実現したパネルを公開している。パネルの寸法は今回と同じだ。

 103lm/Wを実現した手法は2つあるという。1つは同社が開発した新規青色りん光発光材料を採用することで、内部量子効率を高めたことだ。

 有機ELは採用する発光材料によって、蛍光で発光する場合と、りん光で発光する場合に分かれる。蛍光では理論上、投入したエネルギー(電力)のうち、25%しか光に変えることができない。これを内部量子効率が25%であると表現する。これに対して、りん光を利用できれば内部量子効率を100%まで高めることも理論上は可能だ。コニカミノルタの工夫はこの手法を指している。りん光を発する物質は蛍光を発する物質と比べて種類が少ない。新材料の開発が必要だ。さらに青色を発するりん光材料は緑や赤と比較して特性が悪かった。これを改良した形だ。

 高効率化を実現したもう1つの手法は、光学シミュレーションに基づく有機層構成技術と内部光取り出し技術による光取り出し効率向上だ。りん光で発光した光はパネル内部の発光層から360度、全ての方向に放出される。このうち照明として役立つのはほぼ正面方向に向かって放出された光だけだ。このため発生した光のうち20〜30%しか利用できない。これを外部量子効率が20〜30%だと表現する。コニカミノルタの工夫は、正面以外に放出された光を反射や屈折などを利用してなるべく取りだそうとするものだ。

 今回、103lm/Wから131lm/Wまで約27%効率を改善できたのは、以上の2つの手法をさらに改善したためだという。「NEDOのプロジェクトの開発目標は130lm/Wであったため、当初の目的は達成した形だ」(同社)。

有機EL照明はLED照明と互いに補い合うもの

 コニカミノルタが白色有機EL照明パネルの開発に長期間、注力する理由は複数ある。まず、同社には写真感光素材や色素開発など機能性有機材料合成技術の基盤があり、さらに機能性有機材料の設計も可能なことだ。これは発光を支える技術的な側面である。

 もう1つは照明市場の方向性だ。LED照明は発光する素子を製造コストや製造技術の制約から大きくすることができない。基本的には点光源だ。つまり、直進性に優れた光を採りだしたときに最も効率が高くなる。スポットライトのような使い方が本来は最も向いている。

 有機ELパネルは違う。面光源だからだ。発光素子の寸法にはあまり制約がない。今回の開発品でもこぶりなマッチ箱ほどの面積があり、製品化されているパネルは他社品も含め、10cm角程度のものが多い。壁全体や天井全体がぼうっと光るような環境照明を作り上げるなら、有機ELが向いている。同社がドイツの展示会に出展したデモ品のように極端な軽さ、薄さを打ち出した照明を製品化する場合にも役立つ。既存の照明市場とは異なる新しい市場が立ち上がる可能性を秘めているということだ。

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