電力会社は家庭よりも早く企業向けにスマートメーターの導入を進めてきた。ところが従来のスマートメーターには電力の使用量などをデジタル形式のデータで企業に提供する機能がない。この問題を解消するために通信方式を変更して、国内標準プロトコルの「ECHONET Lite」を実装する。
企業や家庭に導入するスマートメーターには2つの機能がある。1つは電力の使用量などを測定する計量機能、もう1つは測定したデータを送信する通信機能である。すでに電力会社が数多くの企業に設置したスマートメーターでは、自動検針に必要なデータだけを外付けの通信端末で送信する仕組みになっている(図1)。
電力の利用者(需要家)に対しては、使用量をパルス(波形)で提供する機能しかなく、BEMS(ビル向けエネルギー管理システム)のようにデジタルデータを処理する用途には向いていない。利用者からデジタルデータを求める声が高まったことを受けて、政府の委員会は高圧スマートメーターの通信機能を変更する方針だ。
これまで自動検針用のデータを送るために使っていた通信端末を改良して、利用者にも電力の使用量などをデジタルデータで提供できるようにする。提供するデータは1日および30分単位の使用量と最大電力のほかに、高圧の電気料金に影響する有効・無効電力量も含まれる。
スマートメーターの通信端末と利用者側の機器を連携させる通信プロトコルには、家庭向けのスマートメーターと同様に「ECHONET Lite」を採用する(図2)。ECHONET Liteは家電製品や電気自動車とスマートメーターを連携させるための国内標準の通信プロトコルで、新たにBEMSを含めて企業向けの機器とも連携できるようにプロトコルを追加する予定だ。
ECHONET Liteに企業向けのプロトコルを追加してスマートメーターの通信端末やBEMSに実装できるまでには、1〜2年はかかるものとみられる。すでに企業向けの高圧スマートメーターは全国の大口利用者のうち約8割に導入が完了している(図3)。新しい通信端末は希望する利用者から切り替えていくことになる。
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