ヒットを連発する米企業、太陽電池で高い競争力蓄電・発電機器(2/2 ページ)

» 2014年03月25日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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変換効率のロードマップを1年前倒しに

 FirstSolarはCdTe太陽電池モジュールの世界記録について発表した同じ日に、投資家向けの説明会を開催した。変換効率のロードマップや、製造コストの目標などを具体的な数字を交えて示している。

 まずは変換効率だ。同社はNRELの資料から量産規模の大きな太陽電池技術についてセル変換効率の動向を3つ抜き出した。その上でCdTe太陽電池セルの変換効率が今後どのように向上していくのか、傾向を示した(図2)。単結晶シリコン太陽電池セル(青い四角)や多結晶シリコン太陽電池セル(白抜きの四角)は変換効率の記録がこの10年間全く更新されていない。それに対して、CdTe太陽電池セルは2011年以降、急速に効率を改善しており、この傾向を延長すると、2017年には単結晶シリコン太陽電池に追い付いてしまう。

図2 CdTe太陽電池の変換効率の将来予測 出典:FirstSolar

 図2は単なる外挿にすぎない。そこで、小面積セルや試作モジュール、量産モジュールについて年度ごとに具体的な数字を挙げた(図3)。

 図3の左端を見ると、研究室の試作レベルにある小面積セル、試作モジュール、量産モジュール(量産品のうち一番性能が高いもの)、量産モジュール(平均値)が描かれている。それぞれの上段にある数字は2013年時点の古いロードマップ。下段は2014年3月時点の新しいロードマップだ*2)。2014年時点のセル変換効率はどちらの数字も20%と変わらないが、それ以降は従来と比較して1ポイントずつ高くなっており、2017年には24%に到達するとした。これは単結晶シリコン太陽電池セルに迫る性能だ。

 試作モジュールや量産モジュールの変換効率の予測もそれぞれ従来よりも高くなっている。2017年には21.1%という高い変換効率のモジュールを量産できるようになる見込みだ。量産品の平均値でも19.5%だ。これは2013年にロードマップで示した値よりも2.3ポイントも高い。

*2) 太陽電池モジュールを量産すると、1枚1枚の変換効率は一定の値を採らず、正規分布をなす。図3の3段目と4段目の間に右下がりの線が描かれているのは、モジュール量産において、最高性能の製品(正規分布の右端)を作り出す技術が1年後には安定し、最も生産数量が多くなること(正規分布の中央になること)を意味している。

図3 CdTe太陽電池の変換効率に関するロードマップ 出典:FirstSolar

コスト予想をより低く

 以上が、CdTe薄膜太陽電池の性能に関するロードマップだ。同社は合わせてコストに関する予測も見せた。図4は太陽電池モジュールのコスト予想だ。出力1W当たりの数値である。2013年度の全モジュールの平均値は0.63米ドル(0.5+0.13)。これが、2018年度には2分の1近くまで下がるとした。コスト低減に最も有効なのは変換効率の向上だが、変動費の抑制や製造効率の改善も大きく効くとした。

 その結果、2013年度に1W当たり1.58米ドルだったシステムコスト(モジュールコスト+BOS)は2017年度には1米ドルを割り、0.99米ドルに到達するという。太陽光のトラッキングシステムや、メガソーラーにおける1500V対応のシステム構成の採用によって実現できるという。

図4 CdTe太陽電池モジュールのコストの見込み 出典:FirstSolar
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