地図から分かる自宅の適性、260万棟が「東京ソーラー屋根台帳」で自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2014年03月27日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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太陽熱の情報も貴重だ、なぜなら……

 東京ソーラー屋根台帳を使うと、太陽光発電だけでなく太陽熱利用の可否も分かる。図2の左上にある「太陽熱利用」タブを押すと、画面が切り替わり、建物を選択すると、図5のように詳細なデータが表示される。設置可能な集熱器の推定面積や、年間予想集熱量が分かる。図5で例示した建物は図4と同じだ。

 太陽熱利用システムを導入すると、冬季でも晴天であれば40〜50度の湯を作り出すことができる。東京都環境局は「熱は熱で。」というキャッチフレーズを掲げ、同システムを推進している。これは「(調理などを除き)家庭で使う熱は低温であり、太陽熱や地中熱が生きる」という意味だ。実際に、都民が住宅で使うエネルギーの半分は給湯と暖房で消費している。わざわざ全てを電力でまかなわなくても、自然の熱をそのまま利用できるのだ。

 太陽熱の特徴は、屋根が小さい建物でも効率よく熱を入手できること。実際に、図4と図5を比較すると、赤く表示された建物が目立つ*3)。太陽熱利用の方が適と評価された建物が多い。図4と図5で例示した建物からも同じ結論が導き出せる。太陽光発電では一般家庭1.8世帯分の電力を得られる一方、太陽熱では一般家庭の熱需要8.9世帯分をまかなえるとあるからだ。入浴などで湯を使う頻度が高い家庭では、特に太陽熱利用を検討する価値があるだろう。

*3) 950kWh/m2以上の日射量を得られる建物を赤、780〜950kWh/m2のものを黄色、それ以下か、屋根面積が5m2以下のものは表示していない。

図5 太陽熱利用について建物ごとの条件を表示したところ 出典:東京都

地図上の面積だけで計算したのか

 東京ソーラー屋根台帳では、発電量をどのようにして求めているのだろうか。まず、航空測量データを使う。2013年1月(区部)や2012年7〜12月(多摩地区)に撮影したデータだ。

 次に、データから個別の建物を3次元解析し、モデル化する。陸屋根や切妻屋根、寄棟屋根など屋根形状のテンプレート(形状データ)を21種類用意、テンプレートをシステム内部で組み合わせ、3次元モデルを作り上げた*4)。図6の右下に示したようなモデルだ。

 最後に、周辺の建物や樹木が作る日陰のデータをこの3次元モデルに当てはめ、南側を向いた屋根を対象に年間予測日射量を割り出した。東京都の日射量データを使った計算だ。こうして、図6にあるように建物ごとの赤と黄色の塗り分けが可能になった。

*4) 複雑な形状の屋根については無理にテンプレートに当てはめていない。誤差が大きくなる可能があるからだ。発電量を計算せず、適合度のみを示した。

図6 3次元モデルを利用して発電量を求めた 出典:東京都
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