日本の将来の電力源として期待がかかる海洋エネルギーだが、普及に向けた最大の課題は発電コストにある。海外で先行事例がある潮流・波力発電の場合、発電コストのうち装置が占める割合は50%以下で、それよりも設置や運転・保守にかかるコストが大きい(図7)。洋上風力にも共通する課題だが、設備を海底に固定したり海面に浮かべたりすることによる。
これに対して海洋温度差発電のコストは規模が大きくなるほど安くなっていく見通しだ。商用化を目前にした1MW級の発電設備では、1kWhの電力を作るコストは40〜60円前後と太陽光発電よりも高い。それが10MW級になると20円前後まで下がって、他の再生可能エネルギーと同等の水準になる。さらに100MW級まで規模が拡大すれば、火力発電並みの10円程度を実現できる(図8)。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2011〜2015年度の5カ年計画で進めている海洋エネルギーの技術研究開発プロジェクトでは、発電コストが40円になるシステムを開発する予定になっている(図9)。それと並行して2020年度に20円まで引き下げるための要素技術を開発する。
この開発プロジェクトの中には、久米島で実施中の海洋温度差発電や、呼子沖で予定している潮流+風力発電の実証試験も含まれている。2020年代に発電コストが20円台になって、固定価格買取制度の対象にも入れば、民間企業の参入が活発になっていく。
2030年を越えた未来に再生可能エネルギーを大きく広げていくのは洋上風力であり、それに続く海洋エネルギーの活用も重要なテーマになる。2030年までは太陽光・陸上風力・中小水力・地熱・バイオマスの5種類を拡大しながら、その先の2050年に向けて洋上風力と海洋エネルギーの導入量を増やしていく。日本が再生可能エネルギーの先進国になるためのロードマップは見えてきた。
(連載終了)
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