連載
» 2014年05月20日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2014年版(6)山形:豪雪地帯で増えるメガソーラー、太陽電池の種類と角度がカギに

山形県は風力発電が盛んな地域だが、それを上回る勢いで太陽光発電が拡大中だ。内陸部の豪雪地帯でもメガソーラーが続々と発電を開始している。積雪対策のために複数の種類の太陽電池を使い分けるのが特徴で、パネルの設置角度や架台の高さも変えながら発電量の最大化を図る。

[石田雅也,スマートジャパン]

 全国各地で太陽光発電が拡大する中にあって、山形県の取り組みは遅れていた。それも無理はない。東北地方の日本海側は日照時間が短く、しかも冬の降雪量が多い。太陽光発電に向かない気象条件にあることは明らかだ。これまでは日本海から吹く強い風を生かして、沿岸部を中心に風力発電を増やしてきた。

 ところが2013年の後半に入ってから、県内の6カ所で相次いでメガソーラーが運転を開始した(図1)。設置場所は豪雪地帯の内陸部に多く集まっている。山形県が太陽光発電の導入量を2012年から2020年までに14倍に拡大させる目標を掲げて推進した成果の表れである。

図1 山形県内のメガソーラー稼働状況(2014年3月時点)。出典:山形県環境エネルギー部

 6カ所のうち1カ所は山形県の企業局が運営するほか、3カ所は県や市が公募して事業者を誘致したものである。企業局が運営する「山形県営太陽光発電所」は発電能力が1MW(メガワット)で、2013年12月に運転を開始した。稼働当初の様子を見ると、発電所の敷地いっぱいに雪が積もっている(図2)。

図2 「山形県営太陽光発電所」の冬の様子。出典:山形県企業局

 このメガソーラーは県東部の村山市にあった園芸試験場の跡地に建設した。2万6000平方メートルの用地に、合計4900枚の太陽光パネルを設置している。パネルは3種類を使い分けるほか、設置する角度、架台の高さや素材も変えて、積雪の状況や発電量を検証する試みである。

 太陽光パネルは県内産の単結晶シリコンを主体にして、国内メーカーと海外メーカーの多結晶シリコンを加えた(図3)。パネルの設置角度は標準的な30度のほかに、一部は40度に傾斜を増やして積雪の影響を比較する。架台の高さは積雪対策のために、通常よりも高い1.8メートルに設定して、一部は2.0メートルまで引き上げた。

図3 「山形県営太陽光発電所」の太陽光パネルの設置状況。出典:山形県企業局

 一般に単結晶シリコンを使った太陽光パネルは発電効率が高い代わりに価格も高い。一方の多結晶シリコンの場合には発電効率は低めになるが価格は安い。さらに同じ多結晶タイプでも、メーカーによって雪の落ちやすさに違いが生じる可能性があると考えて2種類を混在させた。設置角度や架台の高さを含めて、豪雪地帯に最適なパネルの設置方法を見つけ出す狙いだ。

 メガソーラー全体の年間の発電量は105万kWhを見込んでいる。一般家庭で約300世帯分の電力使用量に相当する。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を国内の平均値である12%と想定した。実際に運転開始から1年後の2014年12月の時点で、年間の発電量がどの程度になるか、太陽光パネルの種類や角度によってどのような違いがあるのか、検証結果が注目される。

 山形県の豪雪地帯でメガソーラーの事業を成功させることができれば、降雪量の多い他県にも参考になる。世界的な気候変動の影響からか、このところ東北地方の降雪量が増える傾向にある。国土交通省の調べでは、2011年度には各県の降雪量が過去5年間と比べて軒並み増加して、中でも最大の降雪量を記録したのが山形県だった(図4)。

図4 東北地方の降雪量の増加傾向(毎年度の降り始めから3月末までの降雪量を加算)。出典:国土交通省東北地方整備局

 県営太陽光発電所と同様の取り組みは、村山市から南へ10キロメートルほどの天童市でも進んでいる。山形県が運営する下水道浄化センターの空き地を利用して、発電能力2MWのメガソーラーが2013年9月に運転を開始した。年間の発電量は207万kWhを想定していて、設備利用率は12%を見込んでいる。

 このメガソーラーにも3種類の太陽光パネルを設置した。約8000枚の太陽光パネルの半分は日本メーカーの単結晶シリコンで、残りの半分は国内と海外のメーカーによる多結晶シリコンである(図5)。

図5 「山形浄化センターメガソーラー」の全景と太陽光パネルの配置。出典:POWER E NEXT

 メガソーラーを運営するPOWER E NEXTによると、単結晶シリコンのパネルは耐荷重性能が高いために積雪にも対応できる。2種類の多結晶シリコンは納入実績が豊富な国内メーカーの製品に加えて、シリコン系の太陽電池で問題になる高温時の性能劣化の対策を施した海外メーカーの製品を採用した。

 山形県は夏の最高気温が40度を超えたこともあり、冬の積雪対策と合わせて夏の高温対策も必要になる。太陽光パネルの種類や角度による発電量の比較は、夏と冬を含めて年間を通した検証が求められる。複数のメガソーラーの実績データを集約すれば、検証の精度はいっそう高まる。

 これまでに固定価格買取制度で認定された山形県内の設備の規模を見ると、太陽光は風力やバイオマスを上回っている(図6)。ただし全国の中では最下位に近い水準で、今後さらに拡大できる余地は大きい。県が主導するメガソーラーの実績をもとに、民間事業者を加えた太陽光発電の開発プロジェクトに弾みがつく期待は大きい。

図6 固定価格買取制度の認定設備(2013年12月末時点)

*電子ブックレット「エネルギー列島2014年版 −北海道・東北編 Part2−」をダウンロード

2016年版(6)山形:「バイオマス発電が「モリノミクス」を加速、港の洋上風力と波力にも期待」

2015年版(6)山形:「雪国に広がる小水力発電のパワー、農業用水路や水道設備を生かす」

2013年版(6)山形:「2030年に大型風力発電を230基、日本海沿岸から内陸の高原まで」

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.