太陽電池と無線通信で水田を見守り、広大な干拓地の農作業を軽減スマートシティ

大きな湖を干拓して生まれた秋田県の大潟村で、水田を遠隔から監視する実証実験が始まる。水田の維持管理に欠かせない水位のデータをセンサーで収集して、農家の自宅から監視できるようにする試みだ。電源のない水田にセンサーを設置するために、太陽電池と低速の無線通信を利用する。

» 2014年06月18日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 再生可能エネルギーを農業に活用する取り組みが全国各地で進む中、秋田県でユニークな実証実験が始まろうとしている。実施する場所は日本海に面した大潟村(おおがたむら)で、日本で2番目に大きい湖の八郎潟を干拓して造った広大な農地である。大潟村の農家が保有する農地の広さは平均で17万平方メートルに及び、全国平均の約10倍にもなる。

 この広い農地の管理作業を軽減するために、水田の水位を遠隔で監視する仕組みを導入する。2カ所の水田に水位センサーを設置して、収集したデータを無線通信で近くの倉庫まで送り、そこからネットワークを経由して6キロメートル以上も離れた農家の自宅に情報を送る仕組みだ(図1)。

図1 水位監視サービスのシステム構成。出典:住友精密工業

 農家ではパソコンやスマートフォンを使って水位を確認できるほか、あらかじめ設定した水位の下限値を下回った場合にはメールで通知を受けることもできる。従来は自宅から遠い水田まで頻繁に出向いて、広い水田を見て回る必要があった。遠隔監視が可能になると農作業の時間と労力を軽減することができる。

図2 太陽電池を搭載した「屋外無線ノード」。出典:住友精密工業

 この水位監視サービスは住友精密工業が構造計画研究所と共同で6月中旬から実証実験に入る。電源のない水田で水位センサーを利用するために、新たに太陽電池を搭載した「屋外無線ノード」を開発した(図2)。センサーの駆動と無線通信に必要な電力を太陽光発電で供給する。無線通信は消費電力が少なくて済むように、データ転送速度の遅い920MHz帯の電波を採用している。

 両社は大潟村の実証実験で水位監視サービスの有効性を検証した後に、全国の農業地域に向けて商用サービスを開始する計画である。

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