水素エネルギーで世界をリードする国家戦略、化石燃料に依存しない社会へスマートシティ(2/3 ページ)

» 2014年06月26日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

燃料電池車をオリンピックの輸送手段に

 燃料電池は水素と酸素を反応させて電力と熱を発生させることができる。そのほかには水が作られるだけで、太陽光発電などと同じようにCO2も有害物質も生み出さない。こうした点から自然エネルギーと同等の位置づけにして、家庭で余った電力や熱を取引できる新制度を国が整備する方針だ(図3)。2014年度中に検討して早期に対策を打ち出す。

図3 定置用燃料電池のロードマップ(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 家庭用のエネファームは現在のところ1台で150万円程度の導入費用がかかる。この水準を2020年に半額の75万円程度、2030年には3分の1の50万円程度に引き下げることで、以前から国の長期目標として掲げている2030年に530万台まで普及させる。

 さらに現在のエネファームのように都市ガスなどを使って水素を生成する方式ではなくて、水素を直接供給して使える「純水素型燃料電池」の普及も図る計画だ。業務・産業用では発電効率が高いSOFC(Solid Oxide Fuel Cell:固体酸化物型燃料電池)型の低コスト化を推進していく。

 製品面の進化と並行して水素の供給インフラも整備する。2020年までの第1フェーズでは、自治体などと連携して燃料電池の利用拠点を増やしていく。特に2020年の東京オリンピック・パラリンピックで効果をアピールできるように、選手村などに定置用燃料電池を設置するほか、輸送手段としてバスを含めて燃料電池車を大量に導入する。

水素ステーションの建設費を半減

 燃料電池車はトヨタ自動車が2015年の初めに乗用車を市販するのに続いて、2016年には燃料電池バスの発売を予定している。関西国際空港では燃料電池バスの運行に加えて、貨物の運搬用に燃料電池フォークリフトを導入する計画もある。

 民間企業を中心に車両の開発・導入が進んでいく中で、国の大きな役割は水素ステーションを全国各地に普及させることにある(図4)。当面は燃料電池車の需要が見込まれる大都市圏(首都圏・中京圏・関西圏・北部九州圏)を中心に、2015年までに100カ所の水素ステーションを整備するのが当面の目標だ。

図4 燃料電池車のロードマップ(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 ただし大都市圏では用地の地価が高いことに加えて、水素ステーションの建設費が通常のガソリンスタンドの5倍もかかるために、設置計画は想定通りに進んでいない。水素ステーションの建設費を下げるには、メーカー間で異なる仕様を統一して量産効果を発揮する必要がある。ロードマップでは2020年までに水素ステーションの建設費を現在の半分程度まで引き下げることを目指す。

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