今年度中に太陽光発電を伸ばして、電力小売の全面自由化に備えたいSBエナジー 国内事業本部事業統括部長 橋本邦宏氏

ソフトバンクグループのSBエナジーでは太陽光や風力による発電所を全国各地に建設して自然エネルギーを拡大中だ。2016年の電力小売の全面自由化に向けて、100%子会社の小売事業と連携を進めていく。小売で供給する電力をできるだけ自然エネルギーでまかなえるように、早急に発電量を拡大することが最大のミッションになっている、と発電事業を統括する橋本氏は語る。

» 2014年07月01日 18時00分 公開
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通信会社の責任として、分散型の電源を広めようと考えた

橋本邦宏(はしもと・くにひろ)氏:1990年に日本電気に入社、海外事業を担当。その後に日本ガイダント、株式会社ミスミにて2007年より韓国ミスミ社長。2013年1月にSBエナジーに入社、国内事業本部の事業統括部長に就任。

――まずソフトバンクグループがエネルギー事業を始めた経緯から教えてください。

橋本邦宏氏 やはり東日本大震災が契機になっていると思います。実は私自身、震災時にソフトバンクに在籍しておりませんでしたので、エネルギー事業を始めたきっかけについては、後から先輩方に教えてもらった話になるのですが、震災の影響で通信インフラである携帯電話の基地局に対しても電力が供給されなくなり、その結果、震災後の家族の安否確認などの重要な連絡が取るに取れない状況が続いてしまったそうです。

 その時に「電力がなければ通信は成り立たない」という当たり前のことに、グループ代表の孫(正義社長)をはじめ関係者全員が改めてその事実に直面したそうです。

 さらに福島第一原子力発電所事故の大惨事を目に前にして、わが国のエネルギー問題について真剣に考える機会が拡大しました。結果、「自然エネルギーを含めたエネルギーのベストミックスの追求」を未来につなげていこうという考えのもと、自然エネルギーの普及・促進の牽引役となるべく自然エネルギー事業に参入することをソフトバンクグループとして決意しました。

 有事の災害時にも電力が止まるのを防ぎ、家族や大切な人と連絡を取り合えるようにしたい。原子力に頼らないクリーンなエネルギーを日本中に拡大させたい。そうした願いから、2011年10月にSBエナジーが立ち上がりました。

――SBエナジーを設立した当初の事業構想はどのようなものだったのでしょうか。

橋本氏 基本的な構想は、全国の各地域に再生可能エネルギーを普及・拡大させて、電力供給地が一極に集中する状態から分散型電源へシフトすることです。既存の原子力・火力発電を中心とする電源構成を再生可能エネルギーを含めたベストミックスへ変化させていくことですね。

 これまで3年近く事業を展開してきて、いま見えつつある直近のゴールは、再生可能エネルギーを使った電力を消費者に提供していくことです。ある地域で発電して、その周辺で消費するという“点”のモデルから始めて、その点を連携させて“線”や“面”のモデルに変えていこうとしているところです。

――そうしたモデルの実現に向けて、特に力を入れている施策は。

橋本氏 電力小売の全面自由化をにらんで、当社は100%子会社のSBパワーを2012年8月に設立しております。これは、当社を含む発電事業者から再生可能エネルギーなどを調達して、末端の消費者に安定的に電力を供給していく会社です。調達する電力の中で再生可能エネルギーの比率をできるだけ大きくすることが、発電を担う当社のミッションになります。

 現状は建設中を含めた太陽光発電所が全国18カ所で発電規模が約250MW(メガワット)ですから、事業開始当初に掲げた目標値の200MWは見えてきました。ただし日本全国規模の小売を前提に考えると、太陽光や風力、他の再生可能エネルギーの調達発電量はまだまだ増やしていかなければなりません。

太陽光発電は今年度が重要

――ここまでの事業活動を振り返って、当初想定したよりも困難なことはありましたか。

橋本氏 困難といえば、すべてが困難でした。畑違いの通信会社がエネルギー事業に手を出したわけですから。会社創立時よりベンチャー企業さながらのドタバタの中で、太陽光発電所建設に関する知見がひとつひとつ積み重なってきて現在に至っているという状況でしょうか。2012年7月に開始された固定価格買取制度のもと、特に太陽光発電が飛躍的に成長することとなり、当社もできる限り多くの案件に巡り合い事業化させるための尽力を日々継続しております。

 しかしながら、昨今はメガソーラーに十分な広い土地に出会うケースが少なくなっているのが現状で、案件を実現させるだけの収益性を確保することが難しく、運転開始に至らない案件も多々あります。たとえば、太陽光発電には土地が広く日当たりが良いということが重要な要件になりますが、そのような土地があったとしても、接続すべき電力系統が遠ければコストがかかります。

 あるいは土地は広くて日射も良く、電力系統が近くにあったとしても、土地の傾斜が急だったりすると、やはりコストは跳ね上がってしまいます。最近は山や谷を太陽光発電に使おうとするケースが多く、この場合には発電設備を導入する前の整地の段階でコストが想定以上にのしかかります。

 しかも太陽光パネルの価格がそれほど下がっていませんし、架台などの材料費や工事費はむしろ若干の上昇傾向にあるようです。太陽光発電所の検討案件数は実際に多くありますが、このうち発電に至るのはごくわずかです。この事業化の成否を決める境目を見極め、解決へ導くことが最も重要です。

――それでも再生可能エネルギーの中で、太陽光を中心に手がけていくのですか。

橋本氏 固定価格買取制度の今後の行く末が当社の活動に影響を与える部分もないとは言えませんが、我々は挑戦を続け、グリットパリティの実現を目指していくことに変わりはありません。とにかく、今年度もできるだけ数多くの認定を受けるべく案件の開発を継続したいと思います。

 一方で、自社開発だけにこだわらず、広く太陽光発電の立ち上げを推進することも視野に入れて活動を行っていきたいと思っています。つまり、自社認定案件に限らず他社企業や個人様がすでに取りかかられたものの、何らかの理由で事業化への動きが止まっている案件についても、当社が協力したり、案件を引き受けたりすることで、なんとか発電に結びつけていきたいと思っております。広く門戸を開いて、さまざまな案件に協力していく用意があります。

 加えて、風力発電も積極的に手がけていきます。島根県には三井物産と共同で陸上風力発電所を立ち上げますし、茨城県の鹿島港沖にはウィンド・パワーと協力して日本最大規模の商用洋上風力発電所を建設する計画があります。特に、日本海側の洋上風力には大きなポテンシャルを感じていますので、今後も適地がないか検討を続けていきます。そのほかにバイオマス発電についても可能性を研究中です。雇用の創出や森林の維持管理にも貢献できるメリットがある一方、燃料を安定的に確保することなどが課題になりそうです。

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提供:SBエナジー株式会社
アイティメディア営業企画/制作:スマートジャパン 編集部/掲載内容有効期限:2014年7月31日

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