エネルギー問題のカギは「熱」、トヨタが4社と排熱利用に取り組むエネルギー管理(2/2 ページ)

» 2014年07月03日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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5つの工場で熱を共有、電力ともつなげる

図1 愛知県豊田市と元町工場の位置(赤丸)

 2014年の実証事業は、このようなマスタープランの分析を受けた形だ。実際にシステムを構築して、コストを調べる。

 「クラウン」などを製造しているトヨタ自動車の元町工場(図1)が、大豊工業(輸送用機械)、スズムラ(非鉄金属)、住友ゴム工業(ゴム製品)、中央精機(輸送用機械)と排熱などを共有する。元町工場から見て、他の工場はいずれもほぼ固まって立地しており、直線距離にして1km圏内にある。

 実証事業では4つの取り組みを進める。第1が「工業団地内の効率的な熱共有システムの導入に関する技術実証」だ。パイプラインなどを通じて熱をやりとりしたり、高温の物質を直接クルマで輸送したりする手法では、せっかくの熱が無駄になってしまうと同社は判断した。そこで、「化学蓄熱」を使う。化学蓄熱の多くは可逆反応を起こす物質を使って、熱を化学結合の形で蓄える*3)。「現時点では利用する化合物の候補が複数ある。そのうち1つがマグネシウム系だ」(同社)*4)

 熱を取り出すことが可能な化合物を、既存の物流と組み合わせて蓄熱物流マネジメントシステムを作り上げる。熱輸送に必要な化合物の量が少なく、断熱容器も必要ないことが特徴だ。熱の輸送コストが低くなる。

 取り組みの第2は「地域内のエネルギー負荷状況に対応した排熱回収発電(熱電可変)の技術実証」だ。熱を熱のまま使うのではなく、必要に応じて熱から電力を生み出す。ゼーベック効果を利用した熱電素子(関連記事)はもちろん、発電用タービンまでを視野に入れる。第1の取り組み同様、地域のエネルギー需要に応じた利用を考えており、電力のデマンドレスポンス(需要側の抑制)も実現する。

*3) 甘味料であるエリスリトールやキシリトールに潜熱の形で蓄熱する化学蓄熱の研究開発も進んでいる(関連記事)。
*4) マグネシウム系の化合物を使う方式は、炭酸マグネシウム−酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム−酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム−酸化マグネシウムなど複数あり、適用できる温度帯が異なる。

国内外の工場に広げたい

 第3の取り組みは「地域内の電力需給調整(ピークカット)と、電力需給状況および最適制御の見える化実証」。第1と第2を組み合わせると、電力需要のピークカット(抑制)が可能になる。工業団地全体でエネルギー消費量を削減でき、二酸化炭素排出量も減る。地域に置くEDMS(Energy Data Management System)を使って実現する。

 第4の取り組みは将来を見据えたものだ。「国内外の工業団地への展開を視野に入れたマスタープラン策定」である。工業団地で熱と電力を共有でき、エネルギーを効率良く利用できたのなら、豊田市以外にも広げていきたい。「国内外の当社の自動車工場などに展開したい」(トヨタ自動車)。ビジネスモデルとしての調査、検証も進める。

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