本当に一体化する? 自宅と電気自動車和田憲一郎が語るエネルギーの近未来(3)(2/3 ページ)

» 2014年07月31日 07時00分 公開

家と車の関係を変えるV2H

和田氏 今後の展開はどうか。

太田氏 今回は木質系のスマートハウスだけにV to Heimを適用した。将来は鉄骨系の住宅にも拡充を図りたいと考えている。販売対象エリアも全国へと拡大したい。

和田氏 今後の家作りはどのような方向に向かうのか。積水化学工業としての取り組みは。

太田氏 恐らくEVやプラグインハイブリッドなどの車種が増えると予想している。これらの電動車両は排ガスを出さない(プラグインハイブリッド車はEV走行時)ことから、例えばリビングの近くにクルマが入るなど、家の造り方、家と車の関係も変わるのではないだろうか。最近話題になっている「自動運転車」ではますますそのような傾向が強まるだろう。

 当社は現場での強みを持つことから、今回の経験を基に将来の暮らし方について、異業種の方々、電力会社などとアイデアを出しながら、他社に先駆けて先進的なものにチャレンジしていきたい。

開発が始まったキッカケとは

 次に、EV用パワーコンディショナー「SMART V2H」を製品化し、モニター販売を開始した企業を訪問した。三菱電機 リビング・デジタルメディア事業本部 電材住設PV事業部副事業部長の朝日宣雄氏、同スマート事業推進部企画グループ 担当課長である天明和幸氏に聞いた(図4)。

図4 三菱電機の天明和幸氏(左)と朝日宣雄氏

和田氏 2014年7月1日にEV用パワーコンディショナー「SMART V2H」をモニター販売すると発表したが、どのようなキッカケで今回のV2Hの企画が始まったのか。

朝日氏 2011年3月11日に起こった東日本大震災にさかのぼる。当時、電力不足があらわになり、計画停電もあった。原因が自然災害であることから、電力といえどもすぐには供給できなかった。このような状況の中で、家単位のエネルギー源として、太陽光発電と蓄電池が一部利用できた。しかし、家庭用の蓄電池は容量が5〜7kWhのものしかなく、普段通りの生活では数時間しか持たない。そこでEVを電力供給源として活用できないかと考えた。

 2011年の後半からEV用パワーコンディショナーの開発に着手し、試作品を製作してフィールドテストを繰り返してきた。各メーカーの太陽光発電用パワーコンディショナーと接続できるよう、大船(神奈川県鎌倉市)にある当社のスマートハウスを利用して、居住する状態を模擬し、シミュレーションを繰り返してきた。

 実際の商品化まで時間を要した理由は、3つある。1つ目は太陽光発電、EV、商用電力という3つの電力源をリアルタイムに制御するために、フィールドテストの検証期間が必要だったこと。2つ目は、太陽光発電とEVを系統連系した状態で利用可能とするための新技術の開発が必要であったこと。3つ目として、「電動自動車用充放電システムガイドライン」が当社も参加する電動車両用電力供給システム協議会(EVPOSSA)から発行されて、統一基準ができることを待ったことだ。

和田氏 SMART V2Hには世界初の「電力需給制御システム」など数多くの新技術が盛り込まれている。どのような点に難しさがあったのか。

朝日氏 初期タイプともいえる他社のV2Hは、EVとつなげる際に系統と遮断する。このため太陽光発電が使えなかった。「電力需給制御システム」は、EV、太陽光発電、系統の3種類の電力を混ぜて制御できるようになっている(図5)。この中で太陽光発電だけが売電を許されているので、3種類の電力の中から、太陽光発電のみをカウンタを付与することでリアルタイムに把握している。このようにして3つの電力を混ぜても、売電・給電を制御できるようになった。3つの要素がある電力のやりとりには、充電だけでなく放電もあり、極めて複雑である。制御は容易ではない。

 さらにSMART V2Hが内蔵するパワーコンディショナー以外に、太陽発電用のパワーコンディショナーもある。SMART V2Hのパワーコンディショナーが司令塔を果たし、太陽光発電用パワーコンディショナーや系統の分電盤などを制御するなど、指揮命令系統についても工夫を重ねた。

図5 電力需給制御システム 出典:三菱電機

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