「まとまる」「つながる」ことで生まれる、顧客志向のプラットフォーム初めから分かる一括受電(3)

電気料金以外の負担がなく、マンションの共用部や各家庭の電気料金が削減できる一括受電サービス。今回は一括受電サービスを含めたこれからのマンション向けサービスの可能性について解説する。

» 2014年08月01日 13時00分 公開
[中央電力,スマートジャパン]

住宅やマンションのスマート化

 蓄電池や発電機器、そしてHEMSやMEMS(住宅やマンションにおけるエネルギー管理システム)といったITシステムを備えたスマートハウスやスマートマンション。市場調査会社の富士経済によると、2012年度にはスマートハウスが1.1万戸販売され、今後も住宅のスマート化関連市場は年率で約10%伸びるという。2020年には新築住宅の約17%がHEMS、太陽電池、スマートメーターといった機器を設置するようになると予測している。

 経済産業省も戸建住宅やマンションのスマート化を推進すべく、2013年度よりエネルギー管理システムであるMEMS導入の補助事業を開始し、デマンドレスポンスの実現やスマートメーターの導入を促進している。同省は日立製作所やシャープなどの機器メーカー、東急コミュニティーや日本ハウズイングなどのマンション管理会社、中央電力やオリックス電力などの一括受電企業など、MEMSを導入できる事業者を「MEMSアグリゲータ」として採択し、MEMS導入を進めている(図1)。

図1 MEMSアグリゲータ一覧 出典:環境共創イニシアチブ(SII)のデータに従って作図

顧客をつなげるサービスプラットフォーム

 HEMSやMEMSといった住宅向けITシステムの可能性は大きい。現在は法制度上不可能ではあるものの、今後は電力自由化の流れを受けて、異なるマンションの住民同士が「まとまって」メリットを享受したり、都会のマンションと地域が共同体の壁を越えて「つながる」といったことも可能になっていくだろう。新しいマンション向けのサービスが多数生まれる世界の到来だ。

 この考え方は、「まとまることでメリットが出る」という一括受電システムと似ている。電力だけではない。例えば同じニーズを持つマンションの住民がITシステムを介して「つながる」「まとまる」ことで、食品や衣料などをまとめて安価に購入することができる。都会のマンションと地域がまとまりをきっかけとして交流するという場面も現れてくるだろう。

 これまで電力は、電力会社からのみ供給されるものであったが、今後は自由化によって、顧客が自由に電力を選択できるようになる。サービスがより顧客志向になるということだ。このとき顧客のニーズをまとめ、そこに適切なサービスを提供するプラットフォームが立ち上がってくるだろう(図2)。

 この多様化するプラットフォームと合わせ、今後、顧客向けのサービスが多数、誕生することだろう。

図2 顧客志向のプラットフォームのイメージ 出典:中央電力

電気の自由化を迎え、存在感を増す一括受電

 2016年の電力小売全面自由化後は、太陽光やバイオマスなどを利用したクリーンな地方の電力を、異なるマンション同士でまとめて購入することもできるようになる(図3)。全面自由化を契機に電力小売事業へと参入を計画している企業の数は206社(2014年4月25日現在)まで拡大している。全国に多数の利用者を抱える電話会社をはじめ、住宅メーカー、流通などさまざまなプレーヤーだ。

図3 地方と「つながる」イメージ 出典:中央電力

 こうなると価格競争による魅力的な電気料金だけではなく、各社の特徴を生かした役に立つサービスがマンション住民に還元されていく。数千数万世帯が「まとまる」「つながる」ことにより、これまでになかったようなユニークなサービスが提供されるかもしれない。

 2016年に完全自由化される日本の電力。自由化後は、一戸建てと同様、マンションでも各戸が自分の好みに応じて電力会社を選べるようになる。その際、各戸がばらばらに電力会社を選択するよりも、マンション全体で一括して交渉する方がより有利な条件を引き出せるようになることは、連載第2回でも紹介した通りだ。これに加えて、一括受電サービスを導入することで、顧客志向のプラットフォーム化の実現が可能になり、未来に向けた可能性は一層増す。

 戸建住宅やマンションを取り巻く環境が大きく変わろうとしている。中央電力も「まとまる」「つながる」といった一括受電の精神を大切にしつつ、さまざまな顧客志向のプラットフォームに対し、多様なサービスを提供し続けたい。

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