火力と原子力で決まるCO2排出量、2035年には全世界で1.2倍に増加データで見る世界と日本のエネルギー事情(3)(2/2 ページ)

» 2014年08月25日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
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日本のCO2排出量は2035年に0.8倍へ

 エネルギーの消費に伴うCO2の排出量を見ると、世界全体では1990年から2011年までの22年間で1.5倍に増えた(図4)。特にOECDに加盟していない新興国の伸びが大きく、中国が3.5倍、インドが3.0倍に増えている。日本は1.1倍に収まっているものの、CO2を含む温室効果ガスの削減を定めた「京都議定書」の趣旨に反した結果であることに変わりはない。

図4 世界のエネルギー起源によるCO2排出量の実績と予測(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁(IEAの資料をもとに作成)

 CO2排出量の増加分の多くは電力会社(一般電気事業者)によるものだ。1990年度には日本の温室効果ガスのうち21.8%を電力会社が排出していた。この比率が2011年度に33.6%になり、さらに2012年度には36.2%まで上昇している(図5)。1990年度と比べるとCO2排出量で2億トン以上の増加で、電力以外の減少分を大幅に上回ってしまった。

図5 日本の温室効果ガス排出量(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁(環境省と電気事業連合会の資料をもとに作成)

 IEA(国際エネルギー機関)の予測では、エネルギーを起源とする日本のCO2排出量は2035年には2011年比で0.8倍に縮小する見通しだ。その中には原子力発電所の再稼働分が含まれるほかに、火力発電の効率改善が想定されている。特に全世界の発電量の4割以上を占める石炭火力の熱効率では、日本は長年にわたって世界最高の水準を維持してきた。

 火力発電の熱効率は燃料の熱エネルギーから電気エネルギーに変換できる割合を表す。効率が高いほど同じ電力を作るのに必要な燃料が少なくて済み、同様にCO2の排出量も少なくなる。日本の石炭火力の熱効率は2000年あたりから40%を超えて、ドイツや米国などの主要国に差をつけている(図6)。

図6 主要国の石炭火力の熱効率。出典:資源エネルギー庁(IEAの資料をもとに作成)

 最近では石炭をガスに転換してから発電するIGCC(Integrated coal Gasification Combined Cycle、石炭ガス化複合発電)と呼ぶ技術も進化してきた。東京電力と東北電力が福島県内で2013年からIGCCの商用運転を続けている。IGCCの熱効率は2020年代に50%近い水準まで向上する見込みだ。

 ただし日本の火力発電には老朽化した設備が数多く残っている。特に燃料費が高くてCO2排出量も多い石油火力で老朽設備が目立つ。運転開始から40年以上を経過した設備が2013年度の時点で34.5%にのぼっている(図7)。

図7 日本の老朽火力発電設備の割合。出典:資源エネルギー庁

 発電効率が高いLNG火力の老朽化率は18.1%、燃料費の安い石炭火力では6.8%しかなく、石油火力の老朽化が突出している。電力会社の多くが長年にわたって火力発電設備の更新を怠ってきた結果である。放射能汚染の危険がある原子力発電の安全対策よりも前に、火力発電の設備更新を優先させるほうが国益にかなうと考えるべきだ。

第4回:「日本の天然ガスと石炭はオーストラリア産が最大、原油の中東依存は変わらず」

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