角度がきつい太陽光、垂直なのか違うのか発電・蓄電機器

三協立山は太陽電池セルを組み込んだ壁状のエクステリア部材を発売した。目隠しルーバーの一種であり、視線を遮るという本来の目的と、太陽光を吸収するという機能がうまく組み合わさっている。部材の設置角度を工夫することで、垂直に近い配置ながら、最適角度の8割の出力を得られるという。

» 2014年08月28日 11時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 太陽光発電システムの設置に最も適しているのは、日照などの条件にもよるものの、他の用途に向かない「土地」だ。建物の屋根などに設置し、建物内で消費するという構成が好ましい。土地を有効利用でき、系統への負担も少なく、優れた手法だ。

目隠しを発電に利用

 三協立山が2014年8月に製品化した「太陽電池一体型目隠しルーバー 205タイプ」は、他の用途に使えない「土地」を利用する。目隠しルーバーは外部からの視線を遮ったり、屋外に設置した機器などを隠したりするために広く使われているエクステリアの一種。目隠しとして使うため、重量物を支える必要はなく、風雨に耐えることができればよい。窓のように日照を通す必要がないため、すき間を設ける必要もない。このため表面に太陽電池を並べても製品の「性能」には影響がない。

 「目隠しルーバーとして一般的な寸法の部材に太陽電池を組み込んだ製品であり、通常の目隠しルーバーと混在して設置することもできる」(三協立山)。図1に製品の設置例を示した。

図1 屋上(左)や壁面に設置した例 出典:三協立山

 太陽電池一体型目隠しルーバー 205タイプの構成を図2に示す。アルミ型材ルーバーの表面に単結晶シリコン太陽電池セル(156mm角)を9枚載せた。「実際に設置する際は、(パワーコンディショナーなど)電気的な配線などを工事業者などに設計してもらう必要がある」(同社)*1)

*1) このため、1枚当たりの標準価格はなく、設置場所や土台の有無などと合わせて見積もりを取る必要がある。

図2 ルーバー1枚の構成 出典:三協立山

太陽電池としての効率も考えた

 太陽電池は日照に対して垂直に設置すると最も出力が大きくなる。日本の緯度を考慮すると、30度程度が理想的だ。実際には一日のうちに太陽の方向や高度が変わり、そもそもの設置面の方角にも依存する。真南に向けて設置した場合、設置角度を20〜40度の範囲で変えても発電量は数%しか違わない。

 とはいえ、垂直に設置すると明らかに出力が落ちる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公開する「NEDO日射量データベース閲覧システム」(URL)を利用すると、都市別に設置角度を変えた場合の日射量(出力)が分かる。東京に設置した場合、平均日射量が最大になるのは真南設置の場合30度、垂直に設置すると約3分の2に落ちてしまう。

 そこで、今回の製品では太陽電池の角度を83度に設定した。わずか7度の工夫ではあるものの、東京の場合、設置角30度と比較して8割の発電量を得られるという(図3)。

図3 設置角度と発電量の関係 出典:三協立山

 図2に示したモジュール1枚タイプの最大出力は38W、ルーバーの長さを倍にしたモジュール2枚タイプの出力は76Wである*2)

*2) 2011年に発売した太陽電池一体型目隠しルーバー 175タイプは、125mm角の太陽電池セルを用い、ルーバーの寸法が1510mm×175mmと小さい。最大出力は28Wである。

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