打ち上げる「波が下って」電気生む、20本で25kW自然エネルギー(2/3 ページ)

» 2014年09月10日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

波が越えるとはどういうこと?

 越波式波力発電装置がどのように動作するのかを解説する。図3は重力式躯体の断面図だ。図3には3つ半の躯体が描かれている。1つの躯体の幅は20m、奥行き・高さともに5mある。

 図3の右側が外海、左側は海岸線側の海面だ*2)。躯体の断面は海底に置いた三角形のような形状を採る。このため、沖合から来る波は躯体を「駆け上り」、海水面より高い位置に達する。図3は波が遡上(そじょう)している途中の様子だ。その後、躯体に設けたスリットから、貯水槽に貯まる。貯水槽の底部の穴からプロペラを経由して海水が流れ下る。

 波の運動エネルギーをいったん位置エネルギーに変え、これをプロペラの運動エネルギーに変換することで発電する*3)。スリットは上下2段に分かれており、合計20のスリットを用意する。落差が少なく流量が大きくなるという特徴がある。

*2) 背後の海面は静穏域となり、新たな漁場として役立てる。越波式発電装置は、躯体下部から海水を吐出する。底層に表層の海水が混ざるため、水質環境改善効果を見込むことができるという。
*3) 海が荒れて発電に向かない強い波が起こると、躯体を駆け上って大部分が背面から静穏域に落下する。波の全エネルギーを受け止める装置よりも、低コストで効率良く電力を取り出すことができる。

図3 重力式躯体の断面図 出典:協立電機

カートリッジ構成で保守コストを引き下げる

 発電機とプロペラの部分を図4に示す。図4左側の直方体の構造の上方から海水が流れ下り、装置最下部のプロペラを回す。

 「研究開発中の波力発電設備は35年の運用を前提にしている。当然、途中で部品を交換したり修理したりする必要が出てくるだろう。躯体と発電機やプロペラを一体化してしまうと、このような作業に多額の費用が掛かる。急激な海水の流れがある所でダイバーが作業すると危険でもある。そこで、図4のユニットを丸ごと上方に引き出すことができるカートリッジ構成を採った。故障したカートリッジを引き上げて、新しいカートリッジを設置する。故障したカートリッジは故障原因を突き止めて再利用できる」(中木氏)。

図4 波力発電用の発電機とプロペラの組み合わせ 出典:協立電機

 越波式波力発電では、協立電機の持つファクトリーオートメーション技術(制御技術)も役に立つのだという。「波力発電設備では発電機をなるべく一定の出力で安定して常時動かしたい。ところが、スリットから流入する海水の量はさまざまな条件によって変わる。そこで、カートリッジ内の発電機に負荷を掛けて回転数を制御する。すると、貯水槽部分の水の抜け方を最適制御できる」(中木氏)。工場での制御と比較すると、緻密な制御はできないことが分かったものの、「制御しない場合よりも性能が向上する」(同氏)。

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