太陽光の先進県がバイオマスで全国1位、木質から廃棄物まで燃料にエネルギー列島2014年版(23)愛知(2/2 ページ)

» 2014年09月16日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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バイオマスを農業や水産業にも生かす

 愛知県内には下水の浄化センターが10カ所にある。衣浦東部浄化センターでは汚泥から炭化物を生成する利用法だが、これとは別に汚泥を発酵させてバイオガスを製造するプロジェクトが2カ所の浄化センターで進んでいる。いずれも2016年度からバイオガスの供給を開始する予定だ。

 そのうちの1つ「豊川浄化センター」では、農業や水産業と連携した実証プロジェクトが始まっている。豊橋技術科学大学を中心に実施する「バイオマス・CO2・熱有効利用」の取り組みである。下水汚泥や産業廃棄物からバイオガスを生成して発電に利用するだけではなく、発電に伴って排出するCO2と熱を植物工場や海藻工場で利用する試みだ(図4)。2013〜2017年度の5年計画でCO2排出量の削減効果を実証する。

図4 「バイオマス・CO2・熱有効利用」の実施イメージ。出典:豊橋技術科学大学

 エネルギーとして再利用できるバイオマスは下水汚泥のほかにも数多くある。半田市や碧南市から北へ10キロメートルほどの内陸にある大府市(おおぶし)では、生ごみなどの食品廃棄物からバイオガスを生成する官民連携のプロジェクトが進んでいる。

 地元の廃棄物処理事業者が農林水産省の補助金を受けて、バイオガスを燃料に利用できる発電設備を建設する。大府市のほかに周辺の自治体からも生ごみや食品廃棄物などを収集して、微生物で発酵させてバイオガスを作る。そのバイオガスを使って600kWの電力を供給する計画だ(図5)。

図5 大府市に建設するメタン発酵ガス化発電設備の完成イメージ(上)、発電事業の流れ(下)。出典:オオブユニティ、大府市役所

 年間の発電量は500万kWhを見込んでいて、一般家庭で1400世帯分の電力使用量に相当する。発電した電力は全量を売電する予定だ。メタン発酵ガス化によるバイオマス発電の買取価格(1kWhあたり39円、税抜き)を適用すると、年間の売電収入は約2億円になる。総事業費は24億円で、運転開始は2015年10月を予定している。

 自治体と民間企業によるプロジェクトが続々と始まったことで、愛知県のバイオマス発電の規模は全国のトップに躍進した(図6)。半田バイオマス発電所をはじめ建設中の発電設備が運転を開始すれば、太陽光や風力と合わせて再生可能エネルギーによる電力の供給率は一気に高まる。

図6 固定価格買取制度の認定設備(2013年12月末時点)

*電子ブックレット「エネルギー列島2014年版 −中部編−」をダウンロード

2016年版(23)愛知:「廃棄物から電力を作って農業に、池の上にも太陽光パネルが並ぶ」

2015年版(23)愛知:「太陽光と風力と工場が集まる半島、電力の自給率300%を超える」

2013年版(23)愛知:「太陽光発電で全国のトップを快走、加速するメガソーラー開発に風力や小水力も」

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