海洋再生可能エネルギーの新潟・粟島、火力発電所を全面リプレースへ電力供給サービス

政府が潮流発電や波力発電の実証フィールドに選定した新潟県の粟島で火力発電所の設備更新が始まった。老朽化した5基の発電機から新設する4基に減らして効率を高める。燃料は石油のままだが、冷却方式を水冷から空冷に変更して、近隣の海に温水を排出しない環境保全策を実施する計画だ。

» 2014年10月08日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 粟島(あわしま)は新潟県北部の日本海にあって、東西4キロメートル、南北6キロメートルの小さな島である。人口は400人強で、島内にある東北電力の「粟島火力発電所」が主力の電力源になる(図1)。この離島を支える火力発電所の設備更新が9月29日から始まった。

図1 「粟島火力発電所」の所在地と全景。出典:東北電力

 現在は2号機から6号機の5基で構成して、合計900kWの発電能力がある。日本の離島で標準的なディーゼルエンジンを使った内燃機発電方式の設備だ。燃料は重油の中でも軽油に近い「A重油」を利用する。5基のうち最も古い2号機は1970年に運転を開始して、すでに44年が経過している。

 粟島火力発電所は島内の電力供給を一手に担うことから、設備の更新は発電機を1台ずつ廃止して新設する「スクラップ&ビルド」で進める。まず2号機を9月29日に廃止して設備更新に着手した。新設する4基のうち7号機と8号機を2017年度の前半と後半に運転開始する予定で、その後に3号機と4号機を廃止する。

 さらに9号機を2018年度に、10号機を2019年度に運転開始しながら、それに合わせて5号機と6号機を廃止する計画である(図2)。発電能力は合計900kWで変わらず、台数を5基から4基に減らすことで運転費用の軽減を図る。

図2 発電設備のリプレース計画。出典:東北電力

 加えて火力発電で生じる高温の蒸気を冷却する方法を水冷式から空冷式に変更する。現在は海水冷却器を使って冷却した後に温水を近隣の海に流している。海水の温度上昇を招いて環境破壊につながる可能性があることから、新しい設備ではラジエータを使った空冷式に切り替える。

 粟島の周辺海域は海洋再生可能エネルギーの宝庫で、特に北側の海域では潮流や波力、浮体式の洋上風力発電が有望視されている。2014年7月には国が海洋再生可能エネルギーの実証フィールドとして全国6カ所のうちの1つに選定した。2014年度内に潮流発電から実証試験を開始する見込みで、日本の海洋再生可能エネルギーを切り開く先端プロジェクトの場になる(図3)。

図3 海洋再生可能エネルギーの実証フィールドになる粟島。出典:新潟県産業労働観光部

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