LEDより長寿命な有機EL、照明が変わるかLED照明

カネカは2014年10月、長寿命の白色有機EL照明デバイスを開発したと発表した。寿命は5万時間であり、世界最高水準をうたう。8cm角の正方形の照明である。

» 2014年10月14日 11時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 カネカは2014年10月、長寿命の白色有機EL照明デバイスを開発したと発表した(図1)。寿命は5万時間*1)であり、世界最高水準をうたう。これはLEDの4万時間をもしのぐ。「既に有機ELデバイスと電源を組み合わせて、照明器具メーカーなどに販売を始めている」(カネカ)。

 デバイスの寸法は8cm×8cm。輝度は3000cd/m2。「価格は1万円を切る程度だ」(カネカ)。美術館や博物館、レストランなどの商業店舗、ホテルや病室用照明、高級住宅用のデザイン照明などに向くという。

 照明としての実力はどの程度なのだろうか。照明の品質を評価する指標の1つが平均演色評価数(Ra)である。どの程度太陽の光に近いかを示した値であり、Raが100に近いほど色の再現性がよくなる。水銀灯のRaは40、LED照明では用途により、75〜85のものが多い。「今回の白色有機EL照明デバイスのRaは86だ」(カネカ)。

 もう1つの基準が電力効率。省電力性能を示す。「消費電力は1.5W。電力効率は40lm/Wだ」(カネカ)。こちらはLED照明にまだまだ一日の長がある。LED照明では電球型の製品で133.3lm/W、蛍光灯を置き換える直管形LEDでは190lm/Wに達している製品があるからだ。

*1) LEDでは全光束(lm、ルーメン)が初期の70%まで減る時間を寿命とする。カネカの有機ELでは輝度が70%まで減る時間を寿命としている。

図1 寿命5万時間の白色有機EL照明 出典:カネカ

膜の均一化がカギ

 同社の従来品(3000cd/m2)の寿命は約1万7000時間。これを3倍近くまで伸ばした形だ。劣化に至るメカニズムを分析し、デバイス構造や真空蒸着法における成膜条件を最適化することで実現したという。

 有機EL照明では、陰極、電子輸送層、発光層(有機膜)、ホール輸送層、陽極が1セットとなる。白色有機EL照明では一般に、RGB(赤緑青)の3セットを用意する。「青の層の劣化が進みやすいため、今回の開発では主に青に注力した。有機膜の材料はほとんど変えておらず、構造の改良が主である」(カネカ)。

 3つの層の寿命が著しく異なると、製品自体の寿命が短くなる他に、もう1つ問題が生じる。次第に発色が変わってくることだ。例えば青の輝度が落ちてくると全体に赤っぽい光になってくる。今回の開発の結果、この色変化(色温度の変化)も大幅に改善した。今回のデバイスの色温度(相関色温度)は3000K。5万時間点灯使用時の色温度の変化量を200K以内に抑制できた。この変化量は、同社の従来品を1万7000時間点灯したときの変化量の40%以内だという。

【更新履歴】 Raに触れた第3段落と電力効率を示した第4段落を記事公開後に追加しました。(2014年10月14日更新)

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